人工妊娠中絶の際のパートナーの同意について

質問:人工妊娠中絶の際に、男性側の同意が必要ということですが、相手が分からない妊娠や、レイプによる妊娠の場合はどうなるのでしょうか。

答え:相手が分からない妊娠や、レイプによる妊娠の場合は、人工妊娠中絶の際の男性側の同意は不要です。人工妊娠中絶手術を受ける場合は手術および中絶同意書の提出をお願いしています。既婚・未婚に関わらず本人とパートナーの同意書への署名捺印をお願いしています。未婚の方(事実婚を含まない)の場合には、中絶同意書にパートナーの同意は必須ではありません。状況によっては本人のみの同意でパートナーの同意は不要な場合もあります。未成年者の場合には親の署名捺印も基本的には提出を御願いしています。レイプでの妊娠や相手と連絡がとれない場合には、パートナーの同意は必要ありませんが、手術に関しての家族の同意を得るようにお願いしています。

結婚されている方(事実婚を含む)には配偶者やパートナーの署名捺印を同意書にお願いしています。状況により手術の同意や中絶についての同意について、特別な事情がある場合には個別に相談しています。日本の中絶に関する法律(母体保護法)では、人工妊娠中絶の際には配偶者の同意(戸籍上の夫、事実婚を含む)が必要とされています。母体保護法には下記のように記載されています。

―母体保護法に定められた適応条件―
母体保護法 第三章 母性保護
第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指
定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著し
く害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によってまたは抵抗若しくは拒絶することができない間
に姦淫されて妊娠したもの
2 前項の同意は,配偶者が知れないとき若しくはその意志を表示することがで
きないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の意思だけで足りる。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。