へその緒を切るタイミングについて

妊婦クラスをうけた方から下記のような質問がありました。

「私の4歳と1歳10ヵ月の子どもが1歳くらいの時、貧血で下の子はフェリチンが3でした。自分の産前産後の食生活・甘いものが止められない等、おっぱいの質も良くなかっただろうと思ってはいるのですが「ロータスバース」(出産後、臍の緒を3分切らない・臍の緒の拍動が止まってから切る等)をしていたら少しは貧血マシだったかな?と安易に考えているところもあります。ただアジア人の場合だと黄疸リスクが高まるなども目にし、史先生はどう考えているのかな?と気になっています。」

ちなみにフェリチンというのは身体の中の鉄の蓄えを反映しますので、低ければ低いほど鉄が不足していると考えられます。フェリチン3はとても低く、色々な意見がありますが、月経のある成人女性でも40はあった方が良いと思われるところで、現代人の多くはフェリチンが低く鉄不足の方が多いです。又、身体の中に炎症があったり、脂肪肝があるとフェリチンは高くなるので、鉄不足を反映しない場合があります。

乳児期早期の貧血や鉄不足の予防のためには一番大切なのは、妊娠後期の母体の栄養です。また、へその緒を切るタイミングについてもゆっくりの方が赤ちゃんの鉄の蓄えは増えるかと思われます。

子どもの鉄不足を防ぐためにへその緒をゆっくり切ることはアメリカでは推奨されています。また日本でも早産児には推奨されるようになりました。正期産児には黄疸の問題があるので、まだ検討中の段階です。

新生児蘇生法2015年版では、直ちに蘇生を必要としない早産児に関しては臍帯遅延結紮、なるべくゆっくりとへその緒を切ることが推奨されています。

又、米国産科婦人科学会(ACOG)は2017年に新生児の臍帯結紮に関する委員会声明を改訂しました。そこでは、早産児だけでなく健康状態に問題のない正期産児にも臍帯結紮を出生後30-60秒以上遅らせることにより多くの新生児に大きな利益が期待されると勧告しました。ほとんどの場合、結紮遅延による清拭、呼吸の刺激、早期母子接触といった新生児期のケアへの影響はないとも述べられています。ただし、光線療法が必要となる新生児黄疸がわずかながら増えることから産婦人科医や医療従事者は十分な観察・治療体制を確保しておくべきと注意喚起があります。

ゆいクリニックではできるだけ自然にという方針で、臍帯拍動が完全に止まるまでは臍帯結紮、臍帯切断を基本的には行っていません。
黄疸が増える、赤ちゃんの多血症の心配についてですが、分娩台の上で赤ちゃんが生まれて、赤ちゃんがお母さんの体より下にくる場合には赤ちゃんの体に過剰に血液が来てしまう可能性があるかと思います。フリースタイル分娩でも四つん這いの姿勢で赤ちゃんを産み落とす形だと同じように赤ちゃんに胎盤血流が過剰に流れてしまう可能性があるので、できるだけ素早く赤ちゃんを抱き上げて、赤ちゃんはお母さんに抱き取ってもらっています。そのようなケアをゆいクリニックでは行っています。

それではゆいクリニックでは赤ちゃんの黄疸が多くなっているかということで統計データを調べてみました。黄疸治療が必要な新生児の割合は、 14.1 %(35例/248例)(2011.11~2013.9.20の期間)、16%(69例/432例)(2011~2014年)、22%(119例/553例)(2015~2017年)、他の施設のデータでは、赤ちゃんにやさしい病院のデータでもかなり施設によってばらつきがありますが、10%~50%以上となっていて、そのデータに比較するとゆいクリニックでは特別黄疸が多いということはないと思われます。

臍帯血の血液ガス検査のために臍帯に針を刺さないといけないのですが、臍帯拍動がとまったところで、鉗子をかけて、鉗子の胎盤よりから採血をしています。基本的には臍帯拍動があっても出血が多かったら、急いで胎盤をだすのですが、通常の出血量であれば自然に待ちます。また赤ちゃんの蘇生が必要な場合でも臍帯拍動が泊まるのを待たずに結紮することがあります。

特に問題なければへその緒を切らずに胎盤をだして、あとでゆっくりと臍帯切断を行っています。赤ちゃんとへその緒がつながっている写真を紹介しますね。(写真の掲載についてはご本人の承諾を得ています)

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。