第14回子どもの禁煙研究会の報告

3つの講演と、すばらしいクラシックコンサートまで行われた研究会でした。

以下簡単に研究会の講演についてご紹介します。

講演1:赤ちゃんから始める禁煙活動  安次嶺馨先生

父親の精子は児の健康に大切。

父親の肥満、糖尿病、飲酒、薬物、タバコは精子の質を低下。時の健康に影響を与える。

父親の健康が大切。

母親の高齢化染色体異常の増加。父親の高齢化と発達障害

胎児、赤ちゃんから始める生活習慣病の予防、

生活習慣病と長寿の関係

胎児期も大切、そして小児期も大切という事ですね。

以下、簡単なまとめもいれます。

【Barker仮説とは?】イギリスの医師デイヴィッド・バーカー博士が1980年代に提唱した仮説。

**「胎児期に栄養が不足すると、将来、心臓病や糖尿病などの生活習慣病になりやすくなる」**という考え方です。

バーカー博士は、出生時の体重が少ない人ほど、成人後に心臓病になる率が高いという統計を見つけ、そこからこの仮説を立てました。

低出生体重児、胎児期の栄養状態、成人病のリスク

【DOHaDとは?】正式名称Developmental Origins of Health and Disease

(健康と病気の発生の発達起源)

Barker仮説をもとにして、さらに研究が広がった概念です。

**「胎児期から乳児期、さらには小児期までの環境が、その人の一生の健康に影響する」**とする、より広い考え方です。

栄養だけでなく、以下のようなさまざまな環境が含まれます。

お母さんのストレスや感染症、空気や化学物質などの外的環境、妊娠中の喫煙や飲酒、幼少期の食生活や生活習慣

  • 進化した点:Barker仮説が「胎児期の栄養」に注目していたのに対し、DOHaDはもっと広く**「発達期すべて」と「多様な要因」**を対象にしています。

人の一生を一本の木に例えると、目に見えない根っこが大切。根っこは胎児期から関連。

早産児、妊娠高血圧、低出生体重児、妊娠中の喫煙飲酒、妊娠中の栄養不良これらは木の根っこ、これらが生活習慣病の根になる。

生まれたあと:揚げ物、ファーストフード、人工乳、飲酒、喫煙、運動不足、遅寝、遅起き、虫歯~これらが生活習慣、肥満糖尿病、高血圧、がん、心筋梗塞、精神疾患、脳卒中。などにつながっていく。

長寿ツリーは、正期産、妊娠中の栄養良好。生まれたあとは、適度の飲酒、揚げ物でなく、煮物、和食、母乳。禁煙、運動、虫歯なし、早寝早起き

妊娠中のサポートが大切。

DOHaD仮説の解説。エピジェネティクスが妊娠中の起こっているが、生まれたあとの生活習慣で取り戻すこともできる。

わらびどう宝=童どぅ宝、赤ちゃんから始める禁煙活動。

妊娠中、妊娠前にタバコを断ち切りたい。

命こそ最高の宝である。 命どぅ宝  日本で唯一地上戦を体験した沖縄県で、平和を希求し、命の大切さを語る言葉。

童どぅ宝  太平洋戦争で15万県民の命が牛はわれ、人々は命どぅ宝と命の大切さを訴える。でも平和な現代、生活習慣病でさらに多くの命が失われてしまっている。

生活習慣病のリスクは胎児期から始まる。

妊婦の喫煙は児の障害の疾病のリスクを上げる。

妊婦は栄養と禁煙活動推進。

父親の健康状態や喫煙の時の健康状態に関わる。

講演2:中学生禁煙支援の現場から 永吉奈央子先生

何歳から喫煙を開始したか。中高生から喫煙を開始している人が多い。中学生が喫煙スタート時点。

子供は吸ったことを後悔している。たばこを遊びで吸ったのが間違いだった。タバコがなくなればよかったのに。

やめようとしてもやめられないこどもたち。禁煙が困難なのはニコチン依存症。

主な理由はニコチン依存症、ニコチン受容体の大脳辺縁系、これによって多量のニコチンが必要になってドパミンがでる。ニコチンがないとドパミンがでなくなってしまう。

ニコチン血中濃度を保つために継続的に喫煙したくなる。

ニコチン不足で集中力が落ちてしまう。

子供は学校で吸わないとニコチン切れで集中力が落ちる。放課後吸って頭がさえて、夜型になっていく。やめる方法の話は子供に届きやすい。

ニコチンパッチを使用すると吸いたくならないレベルのニコチンを補給して、ニコチン離脱症状を楽にする。

やめられないのは病気で、意思が弱い、だめな人間でやめられないわけではない。完全に吸わないようにサポート。

講演3:禁煙科学の20年~子どもへの禁煙支援と喫煙防止教育:高橋裕子先生

髙橋先生の講義は何度聞いてもとても勉強になります。

最初に、禁煙科学会の紹介と、今年第20回の学会が京都にて開催されるということでした。オンラインもありとのことで、リアル参加出来無くてもオンラインで参加出来るのは有り難いです。でも本当は、京都に行ってみたい!ですね。

喫煙率低下のための4本柱、

タバコ代金の値上げ、喫煙場所撤廃、禁煙治療の推進、教育啓発、

タバコ代値上げがもっとも効果的と言われている。

タバコを値上げすると税収増えるし、国益にも損にならない。

タバコ値上げで喫煙率低下のデータがある。でも日本ではあまりかかわらない。大学生以上だと喫煙率が下がるが、親のお金でタバコを買う子どもたちには喫煙率の低下につながっていない。

喫煙防止教育を子どもたちに行っていくしかない。

喫煙防止教育は効果があるというデータがある。医師による小学校での喫煙防止教育をうけていると20歳の喫煙率が違う

未成年者への喫煙の健康影響

血流低下、咳、たん、肺機能の低下、ハイ発育障害。気管支喘息発症。腹部大動脈の動脈硬化、冠動脈効果、他の薬物使用の関係。

喫煙による影響は睡眠がもっとも影響が大きい。喫煙習慣を持つことで夜型生活になってしまう。

タバコで味覚がかわって、薄味を受け付けない。スナック菓子や炭酸飲料などを好むようになる。

早く喫煙を開始するとニコチン依存が強くなる。

喫煙場所の撤廃、環境整備、受動喫煙の防止。吸える場所がなくなることで子どもたちは、吸えないことで難儀をする大人をみて、あんなことになりたくないと子どもたちは思う。

11歳までの試しに一本の経験者は将来の喫煙常習につながってしまう。

海外では5歳からの教育が多い。試し喫煙をする前に教育で防止する。

喫煙率低下は、行政教育、医療、住民の力が必要。

東京や神奈川などでは路上喫煙防止について住民と行政でバトルになった。

住民をしっかりと教育していって、住民が納得できて条例を作るとうまく行く。滋賀県奈良県京都はそれがうまくいった。住民教育をしてしっかり知識を持ってもらうと喫煙率がさがる。

奈良県は28位から数年で3位に喫煙率が低下した。小学校1年生に絵本教育。

モクモク王様、絵本と副読本。子どもたちは学校で10分絵本読み聞かせ、大人は副読本を読んだ。←これ、是非沖縄でも出来ないでしょうか?

加熱式タバコと電子タバコが出てきた。

電子タバコは製造販売に制限無し。年齢制限もない。

加熱式タバコは、製造販売は許可企業のみ。年齢制限あり。

加熱式タバコは液体を加熱する。

電子タバコは法律的にはおもちゃと同じ。

加熱式タバコは初期の投資必要5000円くらいかかる。

電子タバコはお金がかからない。

加熱式タバコの器械もどんどん新しいものがでてくる。古いものを大人からもらう子どもがいる。

加熱式タバコは有害物質95%削減とあるが、200種類以上のうちの9種類しか調べられていない。有害物質をへらしても、一日一本の喫煙でも肺がんリスクは上昇するし、有害事象はあまりかわらない。

電子タバコで、喫煙確率が増えてしまう。グリセリンと香料だけでも健康被害がおこる。電子タバコは発がん物質の発生もある。

リルハイブリッド(加熱式タバコ)やシーシャ(水タバコ)などさまざまな新型タバコがある。

シーシャを1時間吸うとと紙巻たばこ100本分の有害物質を摂取する。

子どもたちは短時間で強いニコチン依存に陥る。

吸えないなら死んだほうがましと言う子どもがいる。電子タバコを吸ったら気持ちが良くなるという。電子タバコにはグリセリンと香料だけと書かれている。でもこの依存性の高さは、他の有害物質が含まれている。禁煙外来でこのケースには難渋した。でも、最終的にはその子供は電子タバコをやめられた。ニコチンパッチも拒否した子だったけど、お父さんがニコチンパッチを買って、アイコスをやめた。それで子供もやめられた。このような事例があるという事はまれなケースではあるけど、髙橋先生の素晴らしいサポートがあってこそのケースだと思う。禁煙してとても穏やかになった。

保健所が関わって学校との連絡を密にすると子供の禁煙がうまく行きやすい。

学校と保健所と医療機関の連携を行うことが出来ると理想的。

講演の後にQ&Aが行われて、その後すばらしいクラシックコンサートも開催されました。

すばらしい研究会でした。開催主催者の先生方、事務スタッフの方々、ありがとうございました。

 

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この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。