妊娠中でも禁煙外来に行っていいの?

妊娠中でも禁煙外来に行っていいの?~お母さんと赤ちゃんの健康を守るために~

妊娠がわかったとき、「赤ちゃんのためにたばこをやめなきゃ」と思った方も多いでしょう。けれど、なかなかやめられない自分に戸惑い、罪悪感を抱いてしまうことも少なくありません。でも安心してください。禁煙できないのは、あなたの意志が弱いからではなく、ニコチン依存症という“病気”だからです。禁煙外来は妊婦さんでも受診できる専門のサポートです。

なぜ妊娠中に禁煙が必要?

たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素などの有害物質は、胎盤を通じて赤ちゃんに影響します。妊娠中の喫煙によって、以下のようなリスクが高まるとされています。

  • 低出生体重児(2500g未満)
  • 早産
  • 胎児発育不全
  • 常位胎盤早期剥離、前置胎盤などの異常
  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク増加

妊娠初期であっても、早く禁煙を始めるほど赤ちゃんへの影響を軽減できることがわかっています。妊娠が分かった時点で、できるだけ早く禁煙を開始出来るようにしましょう。

禁煙外来は妊娠中でも受診できます

禁煙外来では、医師や看護師によるカウンセリングを通じて、無理なくたばこをやめられるようサポートします。妊婦さんの場合、ニコチンパッチは薬の添付文書では禁忌とされているため、通常使用できませんが、海外では一般的に使用されているお薬で、状況によって薬の使用も相談します。内服薬(チャンピックス)は、妊娠中も使ってはいけないお薬とはなっていませんが、妊娠中の禁煙に使用経験豊富なのは、ニコチンパッチです。日本の添付文書では禁忌となっていますが、薬の使用に関しても、必要であれば相談にのります。薬を使うにしても、使わないにしても、いずれにしても禁煙できるよう、医師が個別にサポートします。

「やめたいのにやめられない」は自然なこと

たばこを吸うと、脳内にドパミン(快楽ホルモン)が出てリラックスできます。これはニコチンが脳の受容体に作用しているためであり、脳がニコチンに依存してしまっているのです。やめたいのにイライラしたり、集中できなかったりするのは、「甘え」や「気合不足」ではなく、脳の仕組みによる離脱症状です。だからこそ、ひとりで抱え込まず、専門家の力を借りてください。

禁煙支援アプリの活用もお勧めします。

妊娠中は通院や体調の変化で外出が難しい方も多いですが、そんなときに役立つのが禁煙支援アプリです。スマートフォンで手軽に記録・管理でき、モチベーション維持にもつながります。

  • 禁煙ウォッチ(iOS/Android):

禁煙日数や節約金額、健康改善効果が一目でわかる見える化アプリ。禁煙の記録をすることが出来ますが、アドバイスは少なめです。禁煙日数、節約金額、健康回復度などを可視化してモチベーションを保てるアプリ。基本的には、禁煙の記録が主です。

  • 禁煙駅伝

禁煙駅伝は、禁煙の目標の達成状況をグラフで見える化できるアプリです。同じアプリを使用しているユーザーのランキングも表示されます。コメントを書いたり「いいね」を付けたりすることも可能です。お互いにコミュニケーションを取って励ましあえるので、モチベーションアップにつながるでしょう。

  • みんチャレ

みんチャレは最大5人一組で同じ目標に向かって励まし合う、習慣化アプリです。オンライン上で同じ目標を持った仲間を探し、気軽にチームに参加できます。ダイエットや運動など様々な生活習慣改善や目標達成のためのチームがあります。禁煙に向かって頑張るチームも多数あり、一人ではつらい禁煙も仲間とともに頑張れば、自然とモチベーションが続いていくのではないでしょうか。

禁煙SWAN

禁煙SWANは、現在の禁煙の状況が表示されるのに加えて、アドバイスも表示できるのが特徴です。タバコに対する考え方が変わるようなアドバイスも出てきます。気が緩んだときなど、アドバイスに救われて禁煙を継続できることもあるでしょう。

  • QuitNow!:禁煙達成ごとのバッジ獲得、SNS連携機能あり。英語表記だが直感的で使いやすい。
  • みんなの禁煙アプリ:日本語でわかりやすく、医療的根拠に基づいた情報が得られる。禁煙外来とも連携しやすい。
  • 卒煙式(そつえんしき):対応:iOS / Android、主な機能:禁煙日数や節約金額の記録、ご褒美(目標)を設定して達成感を可視化、スタンプやグラフでやる気を維持
    おすすめポイント:ゲーム感覚で楽しく続けられる工夫が満載
  • Smokefree(スモークフリー)対応:iOS / Android 言語:英語(シンプルで読みやすい)主な機能:禁煙日数、節約金額、健康回復状況などをリアルタイム表示毎日の課題(心理療法に基づく)で行動変容を支援おすすめポイント:世界中で高評価。科学的根拠に基づいた禁煙支援
  • 禁煙駅伝:禁煙駅伝は、禁煙の目標の達成状況をグラフで見える化できるアプリです。同じアプリを使用しているユーザーのランキングも表示されます。コメントを書いたり「いいね」を付けたりすることも可能です。お互いにコミュニケーションを取って励ましあえるので、モチベーションアップにつながるでしょう。
  • kwit(クウィット):無料版と追加で有料にすることも出来ます。禁煙をメンタルケアしてくれるアプリ。Kwitのアプリケーションは、WHO (世界保健機関) によって調査され、禁煙を実行するのに最適なアプリである、と評価されています。禁煙を始めたばかり、もしくは卒煙しようと決心したところでしょうか?でも、モチベーションを保つのは大変ですよね。Kwitはそんなあなたに最適のアプリです!今の吸いたい気持ちを、キャラクターが質問してくれるので、10段階で表現したり、ニコチンの離脱症状の辛い気持ちを、日記にして毎日書き込めたりできる。アプリのキャラクターのデザインが可愛くて、開くたびに優しく声をかけてくれるので、癒される。

やめられないのは「だめなお母さん」だからじゃない

「赤ちゃんのためにたばこをやめたい」と思っていても、どうしてもやめられない…。そんな自分を責めていませんか?でも安心してください。たばこがやめられないのはあなたの意志が弱いからではなく、ニコチン依存症という“病気”だからです。妊娠中でも受診できる禁煙外来では、医師や専門スタッフがあなたに寄り添い、安全に禁煙できるようサポートしてくれます。ニコチン依存症は治療が必要な病気です。「意思が弱い」「母親失格」などと思い込まないでください。禁煙外来では、あなたが完全に吸わない生活を目指せるよう、無理のない方法でサポートします。必要に応じて、ニコチンパッチを使用することで、吸いたくならないレベルのニコチンを補給し、離脱症状を軽減する方法もあります。ただし妊娠中の使用は慎重に行われるべきであり、必ず医師に相談しましょう。

なぜ禁煙が難しいの?

喫煙がやめられない主な理由はニコチン依存症です。たばこに含まれるニコチンは、脳の大脳辺縁系にあるニコチン受容体に結びつき、ドパミン(快楽ホルモン)を放出させます。これにより、たばこを吸うと一時的にリラックスできたり、集中力が上がったように感じます。しかし、喫煙を続けるとより多量のニコチンがないとドパミンが出なくなるようになり、血中のニコチン濃度を保つために常に喫煙したくなる状態になります。ニコチンが足りなくなるとイライラしたり、集中力が低下したりする離脱症状が出てしまうのです。

出産後の禁煙支援へつなげていく

妊娠中に禁煙を始めても、産後は授乳や育児のストレスで再び吸いたくなってしまうこともあります。ですが、出産後も禁煙を継続していくことが大切です。授乳中はたとえ喫煙を続けていたとしても、母乳育児は続けた方がよいとされています。母乳には赤ちゃんの免疫や発達にとって大切な栄養が含まれており、たばこによる悪影響よりも、母乳育児の恩恵の方が大きいとされています。禁煙外来では、妊娠中だけでなく産後・授乳期までを見すえた禁煙支援が行われています。焦らず、一緒に少しずつ、禁煙を続けていきましょう。

関連コラム:授乳中の禁煙

授乳中でも大丈夫?!禁煙外来のすすめ

授乳中で疲れやすい、タバコを吸ってしまった。

あなたと赤ちゃんの未来のために

たばこをやめることは、あなたと赤ちゃんの健康を守る最初の一歩です。禁煙は一人で頑張るものではありません。医師、家族、仲間、アプリ…いろいろな力を借りて、できるところから始めてみませんか?

関連コラム

禁煙外来とは?

授乳中でも大丈夫?!禁煙外来のすすめ

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。