赤ちゃんとの添い寝 ― 母乳育児中の「安全で心地よい」ねんねガイド ―

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赤ちゃんとの添い寝とベッド共有 ― 母乳育児中の「安全で心地よい」ねんねガイド ―

「赤ちゃんと同じベッドで寝てはいけない」「添い寝は危ないから絶対ダメ」といった情報を目にして、どうしたらよいのか迷っているお母さん・お父さんは少なくありません。一方で、母乳育児をしていると、夜間の授乳や赤ちゃんの様子が心配で、できるだけ近くで寝たい・同じ布団で寝たほうが楽と感じることも、とても自然なことです。

ここでは、最新のガイドラインや母乳育児の立場から、「ベッドの共有=悪ではない」「添い寝も注意点を押さえればOK」という考え方と、お母さんと赤ちゃんがなるべく安全に、一緒に心地よく眠るためのポイント、そしてアメリカとイギリスの方針の違いからわかることをまとめます。


1.なぜ赤ちゃんのそばで寝たくなるの?

新生児~乳児期の赤ちゃんは、まだ体内時計や睡眠リズムが未熟です。そのため、昼夜を問わず短い睡眠をくり返し、夜中も何度も目を覚まし、授乳や抱っこが必要になる状態が「ふつう」です。

母乳育児中のお母さんにとっては、夜間授乳をしやすいように赤ちゃんをそばに置きたい、赤ちゃんの呼吸や顔色をすぐ確認できる距離が安心、自分も少しでも休みたいので立ち上がる回数を減らしたい、と感じるのはとても自然で大切な感覚です。国際的な母乳育児のガイドラインでも、母乳育児を続けるうえで、親子が近くで眠ることには大きな意味があるとされています。


2.「同じベッドで寝る=すべて危険」ではない

注意が必要なのは、赤ちゃんの睡眠には乳幼児突然死症候群(SIDS)や窒息などのリスクがあることです。うつぶせ寝や、顔が埋もれるような柔らかい寝具、ソファでの寝かしつけなどは危険とされています。

海外の研究や専門家のプロトコルでは、危険な条件でのベッド共有はSIDSや窒息のリスクを高める一方で、条件を整えたうえでの添い寝・ベッド共有には母乳育児や親子の睡眠に良い面もあると報告されています。

つまり、「ベッドの共有だから危険」なのではなく、「どういう状況で一緒に寝るか」が大事だと考えられています。一律に「ベッド共有は禁止」とするのではなく、リスクの高い状況を避けながら、現実的で安全な一緒の眠り方を考えましょうというのが、近年の流れです。


3.安全に一緒に寝るための基本ポイント

ここでは、一般的に「安全寄り」とされる条件と、「これは避けた方がよい」とされる危険なパターンを紹介します。

● 一緒に寝てもよい方向の条件(安全寄りの添い寝・ベッド共有)

次のような条件をできるだけ整えましょう。

  • お母さん・お父さんが喫煙していない
  • アルコールや睡眠薬・違法薬物の影響で強い眠気がある状態ではない
  • 赤ちゃんは在胎37週以降で生まれ、現在特別な医療的リスクがない
  • 寝具は固めで平らなマットレスや布団で、赤ちゃんの身体が沈み込まない
  • 赤ちゃんのまわりに、大きな枕・ふかふかの掛け布団・クッション・ぬいぐるみなどを置かない
  • 赤ちゃんは必ずあおむけ(仰向け)で寝かせる
  • ベッドのすき間や端ではなく、落下や挟まりの危険が少ない位置で寝かせる
  • お母さん(主な養育者)が赤ちゃんの顔を見やすく、すぐに手を伸ばせる位置で寝る

このような条件のもとでお母さんが赤ちゃんのすぐそばで眠ることは、夜間授乳をしやすくし、赤ちゃんの変化に気づきやすくし、母乳育児の継続や親子の安心感にもつながると考えられています。

● 絶対に避けたい「危険な一緒寝」のパターン

一方で、次のような状況はリスクが高く、「一緒に寝ない」ことが強くすすめられる条件です。

  • ソファ・座椅子・リクライニングチェアで赤ちゃんを抱いたまま寝てしまう
  • おとなが大量のアルコール摂取後・違法薬物使用後、または極度の睡眠不足で、赤ちゃんの動きに気づけない可能性がある
  • おとなのどちらかがヘビースモーカーである
  • 柔らかいマットレス・ウォーターベッド・分厚い羽毛布団など、赤ちゃんの顔が埋もれやすい寝具を使っている
  • 赤ちゃんと兄弟・きょうだい・ペットなどが、狭いベッドにぎゅうぎゅうに一緒に寝ている
  • 早産・低出生体重児・退院して間もないなど、状態が不安定な赤ちゃん

こうした状況を避けることが、「ベッド共有は絶対ダメ」ではなく「危険なベッド共有をなくす」という考え方につながります。

4.母乳育児中の夜を、少しでも楽に安全に過ごすために

母乳育児と赤ちゃんの睡眠、そしてお母さん・お父さんの睡眠とメンタルヘルスを守るために、次のような視点が大切だとされています。

  • 夜間授乳をしやすいように、赤ちゃんをお母さんの近くに寝かせる(同室・添い寝・ベッドの横にベビーベッドをつけるなど)
  • 「泣いても放っておく」ことで授乳回数を減らすより、母乳育児のリズムと赤ちゃんの発達に合わせて、現実的にできる工夫を優先する
  • 家族ごとに住環境・体格・文化・価値観は違うため、「うちの家では何が危険で、どこまでなら工夫しながらできそうか」を一緒に考える

「完全に安全な寝方」だけを求めて苦しくなるのではなく、リスクを知った上で、今できる一番安全に近い選択を積み重ねていくことが大切です。

5.育児中のお父さんとお母さんへのメッセージ

  • 赤ちゃんと同じベッドで寝ているからといって、必ずしも危険なわけではありません。
  • 大切なのは、それぞれのご家庭が、安全性と心地よさのバランスをとりながら快適な睡眠環境を選んでいくことです。

ベッドの共有は「悪」ではありません。赤ちゃんとお母さん・お父さんが、少しでも安心して眠れるように、安全に赤ちゃんと一緒に眠りましょう。

6.アメリカとイギリスの方針の違いからわかること

添い寝やベッド共有については、国によって方針が異なります。代表的なのがアメリカとイギリスです。これらの違いは、「添い寝を一律に禁止しても、SIDSが特別少なくなるとは限らない」ことを示しています。

● アメリカ:添い寝を基本的に避ける方針

アメリカ小児科学会(AAP)は、「赤ちゃんとは同じ部屋で寝るが、同じベッドでは寝ない(room-sharing without bed-sharing)」という方針を強く打ち出してきました。赤ちゃんは大人とは別のベビーベッドやベビーベッドサイドのコットに寝かせるよう推奨し、「添い寝は基本的にNG」というメッセージが長年続いています。

● イギリス:注意点を示しながら添い寝も選択肢に

一方イギリス(イングランド&ウェールズ)では、多くの家庭で現実的に添い寝やベッド共有が行われていることを前提に、「危険な条件での添い寝はやめましょう。そのうえで、安全な添い寝のやり方をお伝えします」という方針に転換しました。

たとえば、次のような状況は特に危険とされ、「この場合は添い寝をしないでください」と強く注意喚起されています。

  • 親が喫煙している
  • アルコールや薬物の影響、極度の睡眠不足で赤ちゃんの動きに気づけない可能性がある
  • ソファや柔らかすぎるマットレスで一緒に寝る
  • 早産・低出生体重など、赤ちゃんのリスクが高い場合

そのうえで、リスクの少ない家庭には、固いマットレス・仰向けで寝かせる・顔まわりをすっきりさせるなど、安全に添い寝するための具体的なポイントを伝えています。

● それでもSIDSの差は大きくなかったという示唆

アメリカは「添い寝NG」、イギリスは「注意しながら添い寝OK」という、かなり違う方針をとってきましたが、国全体のデータを比べると、「アメリカのほうがSIDSが極端に少ない」という結果にはなっていません。もちろん、喫煙率や医療体制、社会背景などたくさんの要因が関わるため、政策だけで単純に比較はできません。ただ、ここから言える大事なポイントは、「添い寝そのものを禁止すること」より、「危険な条件での添い寝を減らすこと」が重要だということです。

● 親御さんへのメッセージ:禁止ではなく「安全な選び方」を

世界の状況を見ても、多くの親子がどこかのタイミングで添い寝やベッド共有をしています。「絶対ダメ」と禁止してしまうのではなく、安全を考えることが大切です。そのため、イギリスなどでは、「危険な条件での添い寝はやめましょう。そのうえで、安全に添い寝する方法を一緒に考えましょう」という伝え方に変わってきています。これは、母乳育児と赤ちゃんの睡眠、そして親のメンタルヘルスを守るうえで、とても現実的でやさしいアプローチだと考えられます。私たちも、「添い寝をするか・しないかの二択」ではなく、「どうすれば今の状況の中で、できるだけ安全で、そしてお母さんと赤ちゃんが少しでも楽に眠れるか」を大切にしたいと思います。

睡眠の質を高めるためにも良い睡眠を摂るための工夫を実践しましょう!

  • 朝起きたら太陽の光を浴びる。(体内時計を毎日正しくセットする。)
  • 夕方以降は激しい運動をしない(神経を高ぶらせる)。
  • 日中の適度な運動はよい睡眠に効果的。
  • 寝る前に軽いストレッチをする。(やり過ぎると神経を高ぶらせるので注意)。
  • 眠くなったらすぐに床につく。
  • 夜22時から3時は熟睡できるように早めに布団に入る。
  • カフェイン(お茶、コーヒー、チョコレート、コーラ)などの刺激を制限する。
  • 禁煙する(寝ていてもニコチンが切れると神経が高ぶる)。受動喫煙も避ける。
  • ゲーム、テレビ、インターネット、音楽などは脳への刺激が強いので、寝る一時間前には避ける。
  • ブルーライトを避ける
  • 寝るときにはWIFIを切る。
  • 電磁波を避ける。
  • 暑ければ部屋を涼しくし、頭を冷やす。首は冷やさない。首を冷やすと頭がさえて、よい睡眠には逆効果。
  • 寝る2~3時間前までの食事を終える。
  • 寝る1~2時間前に入浴する(熱い風呂は避ける)。38~40度、42度だと興奮してしまう。
  • 睡眠導入剤代わりの寝酒は不眠のもとになるので避ける。お酒は睡眠を浅くする。お酒の耐性により量が増えていく。
  • 寝具、特に枕を変える。寝室は眠る時のみに使用する。
  • 身体にやさしいふらの布のシーツや毛布を使用する。
  • マッサージが有効。3~5回くらいでも効果有り、マッサージはしばらく続けるのが良い。
  • 昼寝は30分程度にする。それ以上は夜の睡眠に悪影響を及ぼす。 良い睡眠で6~8時間寝る。
  • よい栄養をとる。(ビタミンBなど)
  • 腸をよくする
  • 身体を締め付けるものはつけない。
  • 眠れなくてもシャバーサナポーズで休憩する。足を内旋させて休む。
  • 自然音のCDをかける。(ゆいクリニックの受付で販売しています)
  • アーシングをする
  • ホメオパシーで治療する。
  • 漢方薬睡眠薬など

良い睡眠をとりましょう!

参考文献

  1. Blair PS, Ball HL, McKenna JJ, et al. Bedsharing and Breastfeeding: The Academy of Breastfeeding Medicine Protocol #6, Revision 2019. Breastfeeding Medicine. 2020;15(1):1–12.
  2. Zimmerman D, Bartick M, Winter LF, et al. ABM Clinical Protocol #37: Physiological Infant Care—Managing Nighttime Breastfeeding in Young Infants. Breastfeeding Medicine. 2023;18(3):159–168.
  3. 太田英伸.子どもと養育者の睡眠を最適化し両者のメンタルヘルスを改善する.日本新生児成育医学会雑誌.2021;33(3):57–59.
  4. 厚生労働省.健康づくりのための睡眠ガイド2023.
  5. こども家庭庁.未就学児の睡眠に関する指針.

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この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。