別室で寝れば楽になる? 赤ちゃんと「よりよく眠る」ための工夫

別室で寝れば楽になる?
赤ちゃんと「よりよく眠る」ための工夫

「お母さんだけでも別室で寝たほうがいい」「赤ちゃんは別室で寝かせたほうが夜ぐっすり眠れる」――そんなアドバイスを耳にして、どうするのが一番いいのか迷っていませんか?実は、別室で寝たからといって、お母さんが劇的に眠れるようになるとは限りません。このコラムでは、赤ちゃんとお母さんが一緒に、できるだけ楽に・安全に眠るための考え方と工夫をまとめました。

1.お母さんが別室で寝てもぐっすり眠れないことが多い理由

新生児~乳児期の赤ちゃんは、体内時計や睡眠のリズムがまだ未熟で、昼夜を問わず短い睡眠をくり返し、夜中も何度も目を覚ますのが「ふつう」です。6~18か月の間も、入眠に時間がかかったり、夜に何度も起きる子は少なくありません。つまり、赤ちゃんがよく起きるのは特別なことではなく、多くの家庭で起きていることです。

お母さんだけ別室で寝た場合も、赤ちゃんの泣き声が気になって目が覚めてしまう、様子を見に何度も行き来する、授乳やオムツ替えのたびに立ち上がる――といったことで、意外と「ぐっすり眠れた」と感じにくいことがあります。赤ちゃんと距離が離れることで、むしろ不安や負担が増えてしまうケースもあります。


2.「赤ちゃんと一緒に」よりよく眠るという発想

大事なのは、「お母さんが楽をするために赤ちゃんから離れる」か「常に一緒にいるべきか」という二択ではなく、赤ちゃんの発達や母乳育児のリズムに合わせながら、親子が一緒にできるだけよく眠る方法を探すという考え方です。赤ちゃんの睡眠には「こうでなければいけない」という正解はなく、その家庭の環境や価値観に合わせて調整していくことが大切です。


3.赤ちゃんとよりよく眠るための具体的な工夫

● 寝る場所の工夫:同じ部屋で、安全に近くで寝る

母乳育児や夜間のケアを続けるうえで、赤ちゃんとお母さんが「近くで眠る」ことには大きな意味があります。おすすめの基本は、同じ部屋で、できるだけ安全に近くで寝ることです。

  • ベビーベッドをお母さんのベッドの横につける
  • 布団を並べて敷き、安全に添い寝できるようにする
  • 同じベッドで寝る場合は、喫煙・飲酒・睡眠薬などがないこと、柔らかすぎるマットレスや大きな枕・重い布団を避け、赤ちゃんは仰向けで顔まわりをすっきりさせる

距離が近いことで、赤ちゃんの小さな動きや声に早く気づき、泣きが激しくなる前に授乳や抱っこをしやすくなります。その結果、赤ちゃんもお母さんも「大泣きで大きく起こされる」回数が減り、トータルとして睡眠の質が上がりやすくなります。

● 授乳スタイルの工夫:横になって授乳してみる

母乳育児中の夜の負担を大きくしているのが、「何度も起き上がること」です。布団やベッドの高さを調整して、横向き(側臥位)で授乳できる環境を整えると、お母さんの体の負担がかなり軽くなります。横になったまま授乳できれば、授乳のあとそのまま一緒に眠りやすくなり、細切れでも「休めた」という感覚につながりやすくなります。

● 昼と夜のメリハリをつけて、リズムづくりをサポート

赤ちゃんの睡眠リズムは、周りの環境から少しずつ育っていきます。できる範囲で構わないので、次のような工夫が役立ちます。

  • 日中はカーテンを開けて明るく過ごし、抱っこや遊びで「起きている時間」をつくる
  • 夜は照明を少し落とし、テレビやスマホの光を控えめにして「静かな時間」にする
  • お風呂→授乳→絵本や子守歌など、眠る前のパターンを少しずつ決めていく

完璧にやろうとする必要はありませんが、「だいたいこんな流れで眠る」という繰り返しが、赤ちゃんの体内時計づくりの助けになります。

● 家族で役割を分けて、お母さんの休息時間を確保

夜間授乳そのものはお母さんの役割でも、それ以外の部分はパートナーや家族が力になれます。たとえば、オムツ替えや寝る前の抱っこ、朝方数時間赤ちゃんをみて、その間お母さんが二度寝するなど、「お母さんがまとめて少し眠れる時間」を意識してつくる工夫が大切です。

4.「別室で寝ていないからダメ」ではありません

別室で寝ないからといって、お母さんが無理をしている、頑張りすぎているというわけではありません。むしろ、多くの母乳育児中のお母さんが、「そばにいたほうが安心」「そばにいたほうが楽」と感じています。大切なのは、

  • お母さんが少しでも休める方法かどうか
  • 赤ちゃんにとって安全な環境かどうか
  • その家庭にとって続けやすい方法かどうか

という視点で考えることです。完全な正解はなく、「今の状況の中で、もう少し楽に・もう少し安全に近づく工夫」を少しずつ重ねていければ十分です。

参考文献

  1. 山本和歌子.よくある心配事~赤ちゃんの睡眠について~.第53回母乳育児支援学習会資料集.2025.
  2. Douglas PS, Hill PS. Behavioral sleep interventions in the first six months of life do not improve outcomes for mothers or infants. Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics. 2013.
  3. こども家庭庁.未就学児の睡眠に関する指針.2018.
  4. 厚生労働省.健康づくりのための睡眠ガイド2023.

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この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。