Pink Goes Red 講演報告:女性の心臓を守るために——予防はエンパワメント

Pink Goes Red 講演報告:女性の心臓を守るために——予防はエンパワメント

2026年2月7日、「Pink Goes Red × Go Red for Women」イベントにて、女性の心臓病予防について講演させていただきました。産婦人科医として沖縄市のゆいクリニックで診療する中で、強く伝えたい事実があります。心疾患は女性の死亡原因として非常に大きな割合を占めるにもかかわらず、女性では見逃されやすく、治療や予防が遅れがちです。だからこそ、症状が出る前からの予防が重要です。

講演では、女性の心血管リスクで見落とされやすい3つのポイントをお伝えしました。1つ目は運動不足、2つ目は更年期前後のホルモン変化、3つ目は「症状が出てから」では遅いという予防の遅れです。心疾患は何十年もかけて静かに進行するため、早い段階からの気づきと行動が欠かせません。

朗報としてお伝えしたのは、「運動は薬」であり、女性は比較的短い運動時間でも心臓へのメリットを得やすいという点です。特別なトレーニングではなく、歩く・踊る・自転車に乗るといった日常の中等度の運動を、無理なく継続することが大切です。大切なのは強度よりも継続です。

さらに、心臓を守る生活習慣の土台として「5つの柱(5 Pillars of Health Foundation)」を紹介しました。(1) 野菜・果物・全粒穀物・魚・豆類を中心とした栄養、(2) 定期的な運動、(3) 質の高い睡眠、(4) ストレス管理、(5) 身体を温めて血流を保つこと。完璧を目指すより、続けられる形で積み重ねることが最も重要です。

更年期は、女性の心血管にとって大きな転換点です。閉経前はエストロゲンが血管や代謝を守る方向に働きますが、閉経後はその保護効果が低下し、心血管リスクが上がりやすくなります。ホットフラッシュなどの症状も、単なる不快感として片付けず、体の変化のサインとして捉える視点が必要です。この時期こそ、検診や生活習慣の見直しなど、能動的な予防が重要になります。

最後に、ホルモン補充療法(HRT)についても最新知見を共有しました。長年不安が先行しやすかったHRTですが、現在は「誰に」「いつ開始するか」というタイミングが重要だと考えられています。閉経後10年以内、または60歳未満など、条件が合う方ではメリットが期待できる可能性があります。HRTは全員に必要な治療ではありませんが、古いイメージだけで避けるのではなく、医療者と正確な情報に基づいて相談することが大切です。

講演を通してお伝えした中心メッセージは、「予防とは、症状を待つことではなく、早期に土台を築くこと」です。今回の機会を通じて、参加された皆さまが明日から実践できる一歩を持ち帰ってくださっていたら嬉しく思います。未来の自分のために、今日からできる選択を重ねていきましょう。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。