良く眠るために、栄養が必要!

「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「眠っても疲れが取れない」——そんなお悩みを抱えている方は少なくありません。睡眠というとストレスや生活習慣が注目されがちですが、実は毎日の食事、つまり栄養の状態も深く関わっています。今回は、睡眠と栄養の関係について、やさしくお話ししたいと思います。

睡眠を支える3つの脳内物質

私たちの体は、夜になると自然に眠るための準備を始めます。そのとき大切な働きをしているのが、セロトニン、メラトニン、そしてGABAといった脳内の物質です。セロトニンは心の安定に関わる物質で、メラトニンは眠気を促して自然な入眠を助けます。GABAは脳の興奮をやわらげ、心身をリラックスしやすい状態へ導いてくれます。

メラトニンは食事の材料からつくられる

メラトニンは、セロトニンを材料にしてつくられます。そしてセロトニンの材料になるのが、トリプトファンというアミノ酸です。トリプトファンは、肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質を含む食品に多く含まれています。つまり、良い眠りのためには、毎日の食事から必要な材料をしっかり摂ることがとても大切なのです。

セロトニン合成に必要な栄養素

ただし、材料だけあればよいわけではありません。トリプトファンがセロトニンになり、さらにメラトニンへと変わっていくためには、ビタミンB6、葉酸、ナイアシン、鉄、マグネシウム、亜鉛、ビタミンDなど、さまざまな栄養素の助けが必要です。体の中では、たくさんの栄養素が協力しながら、眠りを支える物質をつくっているのですね。

睡眠の質を高める食事のポイント

また、眠りの質を考えるときには、「何を足すか」だけでなく、「体に負担をかけすぎないか」という視点も大切です。加工食品や糖分の多い食品に偏った食生活は、体の炎症につながることがあります。すると、トリプトファンがセロトニンをつくる方向ではなく、別の経路へ流れやすくなることもあります。眠れないときこそ、体をいたわるやさしい食事を意識していただけたらと思います。

毎日の食事でおすすめしたいのは、まずたんぱく質をしっかり摂ることです。肉、魚、卵、大豆製品を、無理のない範囲で毎食の中に取り入れてみましょう。そして、ビタミンB6を多く含む鶏肉、まぐろ、バナナ、マグネシウムを含むナッツや海藻、鉄を含む赤身肉や豆類、緑の野菜なども少しずつ加えていけると理想的です。特別なことを一気に頑張る必要はありません。毎日の食卓を少し整えることが、体の土台をやさしく支えてくれます。

最近では、グリシンというアミノ酸にも注目が集まっています。グリシンは深部体温をゆるやかに下げて、眠りに入りやすくする可能性があるとされています。こうした栄養の力を上手に借りながら、睡眠を見直していくこともひとつの方法です。

今日から始めたい、やさしい食事の見直し

眠りは、夜になって急につくられるものではなく、一日の過ごし方や食事の積み重ねの中で育まれていきます。眠りに悩んでいる方は、まずは朝食を抜かないこと、たんぱく質を意識して摂ること、甘いものや加工食品に偏りすぎないことから始めてみてください。小さな積み重ねが、やがて大きな変化につながっていきます。

心と体がほっとゆるみ、安心して眠れる夜のために。毎日の食事を、やさしく整えることから始めてみてくださいね。もし不眠が長く続く場合や、気分の落ち込み、強い疲労感などを伴う場合には、どうぞひとりで抱え込まず、ご相談ください。


睡眠でお悩みの方は、生活習慣だけでなく、毎日の栄養状態にも目を向けてみてください。食事を整えることは、心と体を整えることにもつながります。気になる症状が続く場合は、どうぞお気軽にご相談ください。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。