甘いもので乗り切るほど夕方つらくなる理由|更年期と副腎の話【産婦人科医】
更年期になると、「夕方になるとどっと疲れる」「朝から身体が重い」「甘いものが無性に欲しくなる」「気持ちが落ち込みやすい」「眠りが浅くなった」といった変化を感じる方が増えてきます。疲れたときに甘いものを食べると、一時的に元気になったように感じることがあります。しかし、甘いもので疲れを乗り切ることを繰り返していると、そのあとさらに疲れやすくなることがあります。その背景のひとつに、血糖値の大きな変動と、副腎から分泌されるコルチゾールの働きがあります。今回は、更年期をできるだけ穏やかに過ごすために知っておきたい「副腎」と食事の関係について、毎日の生活ですぐに取り入れられる5つのポイントに分けてご紹介します。
更年期と副腎の関係
更年期は、卵巣から作られる女性ホルモンが大きく減っていく時期です。その一方で、副腎や脂肪組織などから作られるホルモンの役割が相対的に大きくなっていきます。副腎は、腎臓の上にある小さな臓器で、ストレスに対応するコルチゾールや、DHEAなどのホルモンを作っています。更年期を少しでも穏やかに過ごすためには、毎日の生活の中で副腎に負担をかけすぎないことも大切です。そのために、まず見直してほしいのが毎日の「食べ方」です。
1.血糖値を乱高下させない
副腎をいたわるために、まず意識してほしいのが血糖値をできるだけ安定させることです。甘いものや菓子パン、パンだけ・麺だけといった食事をすると、血糖値が急激に上がりやすくなります。そして、大きく上がった血糖値は、そのあと下がっていきます。血糖値が下がったとき、身体は血糖を維持するためにさまざまなホルモンを使って対応します。そのひとつが、副腎から分泌されるコルチゾールです。
つまり、
甘いものを食べる
↓
血糖値が急激に上がる
↓
その後、血糖値が下がる
↓
身体が血糖値を維持しようとする
↓
副腎も働く
ということが繰り返されます。このような血糖値の乱高下を一日に何度も繰り返さないためにも、日々の「食べ方」を整えることが大切です。
朝ごはんを抜かない
まず意識してほしいのが、朝ごはんです。空腹時間が長くなるほど、血糖値を維持するために身体はさまざまな調整を行います。「朝はコーヒーだけ」「朝食を食べない」「昼まで何も食べない」という方で、夕方になると甘いものが欲しくなる場合には、一度朝食を見直してみてください。豪華な朝ごはんでなくても大丈夫です。卵、魚、納豆、豆腐など、たんぱく質を含むものを少し加えることから始めてみましょう。島袋は朝食抜きをお勧めしていますが、血糖値が安定しない人は、まずは血糖値を安定させてから朝食抜きをお勧めします。
甘いものを「だけ」で食べない
甘いものを絶対に食べてはいけない、ということではありません。大切なのは、甘いものだけで済ませないことです。菓子パンだけ、チョコレートだけ、甘い飲み物だけ、という食べ方よりも、たんぱく質や食物繊維を含む食品と組み合わせることを意識してみましょう。間食をするなら、ナッツ、ゆで卵、素焼きの大豆などもおすすめです。全部変える必要はありません。まずは「ゆで卵をひとつ持ち歩く」など、できることから始めてみてください。
2.ホルモンの材料を毎食少しずつとる
身体がホルモンを作るためには、材料となる栄養素が必要です。特に大切なのが、たんぱく質と脂質です。おすすめは、卵、魚、肉、豆類、ナッツ、オリーブオイル、青魚などです。卵は1日1~2個程度を目安に。魚・肉・豆類などのたんぱく質は、1食で手のひらサイズ程度を目安に、毎食少しずつ取り入れてみてください。また、「脂質は太るから」と極端に減らしている方もいますが、脂質も身体に必要な栄養素です。オリーブオイル、ナッツ、青魚などの良質な脂質を、適量取り入れていきましょう。
3.コルチゾールばかりに偏らないようにする
副腎は、ストレスに対応するコルチゾールだけを作っているわけではありません。DHEAなど、身体を支えるほかのホルモンも作っています。強いストレスが続き、毎日のようにコルチゾールを使って対応している状態では、身体に負担がかかりやすくなります。そのため、日常生活では、
・強いストレスを少しずつ手放す
・カフェインをとりすぎない
・白砂糖に頼りすぎない
・「がんばりすぎない日」を作る
といった工夫も大切です。特に「休むこと」に罪悪感を持ってしまう方は少なくありません。ですが、休むことも更年期の大切なセルフケアです。
4.セロトニンを作る材料と朝の光を意識する
更年期には、気分が落ち込みやすい、イライラしやすい、何となく気持ちが不安定になる、と感じる方もいます。心の安定に関わる物質のひとつがセロトニンです。セロトニンを作るためには、たんぱく質に含まれるトリプトファンをはじめ、ビタミンB6、鉄、炭水化物などが関わっています。そして、もうひとつ大切なのが朝の光です。朝起きたらカーテンを開けて、できれば15~30分ほど外の光を浴びてみてください。ベランダでも、庭でも、洗濯物を干しながらでも構いません。食事で材料を整え、朝の光を浴びることを組み合わせることで、身体の1日のリズムを整えることにもつながります。
5.朝日を浴びて、しっかり眠る
食事と同じくらい大切なのが、睡眠です。セロトニンは夜になると、睡眠に関係するメラトニンにもつながっていきます。「夜眠れない」という方ほど、夜だけではなく、朝の過ごし方にも目を向けてみてください。朝起きたら光を浴びる。朝ごはんを食べる。夜はスマートフォンなどの強い光を少し控える。そして、なるべく毎日同じ時間に眠る。7時間程度の睡眠を確保できれば理想的ですが、「そんなに眠れない」という方もいると思います。その場合も、まずは寝る時間と起きる時間をできるだけそろえることから始めてみてください。
全部やろうとしなくても大丈夫です
ここまで5つのポイントをご紹介しました。
1.血糖値を乱高下させない
2.ホルモンの材料を毎食少しずつとる
3.コルチゾールばかりに偏らないようにする
4.セロトニンを作る材料と朝の光を意識する
5.朝日を浴びて、しっかり眠る
でも、全部を一度に始める必要はありません。「砂糖を減らさなきゃ」「朝ごはんも食べなきゃ」「早く寝なきゃ」「運動もしなきゃ」と全部やろうとすると、それ自体がストレスになってしまうことがあります。今日からできそうなことを、ひとつだけ選んでみてください。
たとえば、
・朝、卵を1個食べる
・甘いものだけで間食を済ませない
・ナッツを持ち歩く
・朝起きたらカーテンを開ける
・夜のスマホ時間を少し短くする
これだけでも十分です。
「更年期だから仕方がない」と決めつけないで
更年期は、女性の身体が大きく変化する時期です。「夕方になると疲れる」「甘いものが欲しくなる」「眠りにくくなった」「気持ちが安定しない」といった変化を感じる方もいます。だからといって、「年齢だから仕方がない」「更年期だから我慢しなければ」と決めつける必要はありません。毎日の食事や睡眠、生活リズムを少しずつ整えていくことで、身体が楽になる方もいます。
まずは、
「疲れたとき、甘いもので無理に乗り切っていないかな?」
と振り返ってみてください。今日からひとつ。できることから始めてみましょう。なお、強い疲れが長く続いている方、体重が急に減っている方、治療中の病気がある方などは、自己判断で食事を大きく変えず、かかりつけの医療機関へご相談ください。
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