第42回性教育指導者セミナー全国大会に行ってきました。

今回、大阪で開催された性教育指導者セミナーに参加してきました。

避妊教育ネットワークに所属して3年と少し、ネットワークの先生方の熱い想いに触れるにつけて、性教育指導者セミナーには一度は参加しようと思いつつ、なかなか行けなかったのですが、今年ついに参加できました。土曜日の午後に、市民公開講座があり、そちらにも参加したかったのですが、外来終わってからだと間に合わなかったので、懇親会から参加しました。

市民公開講座の今年のテーマは「性教育はなんか難しい!?」というテーマで、産婦人科医と学校の先生が一緒に考える性教育についてのワークショップということで、大阪の学校へのアンケート報告や、LGBTについて、セックスをどう教えるか、幸せな未来のために学ぶ、学校の先生とのディスカッションなどが行われたようです。アンケート結果では、小学校、中学高校では8割の学校が性教育の指導を通常の授業以外で行っているという結果でした。また、性的マイノリティやLGBT(Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつ)ではなく、SOGI(Sexual Orientation and Gender Identityの略で、「性的指向と性自認」という意味)という表現から多様性を考えるという言葉での表現が好まれるようになってきているということをつたえ、個性の尊重を子どもたちが理解できるようにということが抄録にあげられていました。

また、中学生、高校生向け性教育スライドのダウンロードができるという事が紹介されていました。日本産婦人科医会女性保健部会のホームページで紹介されていて、だれでも利用可能なのだそうです。但し書きとして使用する際には、必ず『日本産婦人科医会「思春期ってなんだろう?性ってなんだろう?2019年度改訂版」』よりの出典と記載して下さいとのことでした。

市民公開講座は参加できませんでしたが、懇親会には間に合い(奇跡的に土曜日の外来が早く終わって、予定より一つ前の飛行機に乗れました)、久しぶりに会う先生方とお話しできました。

懇親会ではマンガ「コウノドリ」のモデルで有名な産婦人科医でジャズピアニストの荻田和秀先生とそのバンドの演奏が行われました。

また、以前は避妊教育ネットワークの先生方が行っていた市民公開講座での劇が今年はなかったかわりにということでプロの劇団による妊娠にまつわる劇が行われました。予期しない妊娠に直面した高校生が、母親に妊娠を伝えて、この妊娠は、起こってしまったことを後悔しながら生きるのではなく、また妊娠した人が悪いわけでもない。だから、それが起こってしまった後にどのように生きるかが大切だと思うと劇では結論づけていました。劇をみた先生方にも色々な意見がありそうでしたが、臨床の現場でも様々な例があり、今回の性教育指導者セミナーのテーマである、「十代の性をまもり育てる」という今回のセミナーのテーマに沿って考えさせられました。

大阪はあまりなじみがないのですが、会場から電車で10分くらいの通天閣の近くのホテルに宿泊しました。夜はライトアップされていて、夜と朝に写真を撮ってみました。

第42回性教育指導者セミナー全国大会プログラム
基調講演 十代におけるリプロダクテイブ・ヘルス&ライツの実践
座長:野口まゆみ(日本産婦人科医会女性保健委員会委員長)
講師:加藤 治子(性暴力救援センター・大阪SACHICO代表)
教育講演 リプロダクテイブ・ライツの考え方と人工妊娠中絶
座長:志村研太郎(大阪産婦人科医会会長)
講師:木村  正(大阪大学大学院医学研究科産婦人科学教授)
ランチョンセミナ一 ひとごとではない性感染症
座長:古山 将康(大阪市立大学大学院医学研究科女性生涯医学教授)
講師:早川  潤(早川クリニック 院長)
シンポジウム 十代の性をまもり育てる ~気づく、よりそう、育てる、向き合う~
座長:安達 知子(日本産婦人科医会常務理事)
座長:谷口  武(大阪産婦人科医会理事)
13:00 〜 13:20
(1)子どものSOSに気づ<
山本 恒雄(恩賜財団母子愛育会愛育研究所客員研究員)
13:20 〜 13:40
(2)十代の妊娠・出産によりそう
楠本 裕紀(阪南中央病院産婦人科)
13:40 〜 14:00
(3)子どもたちの性を育てる
重松 和枝(CAPセンター・JAPAN)
14:00 〜 14:20
(4)性非行・性加害少年に向き合う
藤岡 淳子(大阪大学大学院人間科学研究所教授)
14:30 〜 15:30
デイスカッション

飛行機の時間の関係で最後までいられず、シンポジウムは聞けませんでしたが、講演はどれも素晴らしくとても勉強になりました。

十代におけるリプロダクテイブ・ヘルス&ライツの実践

加藤治子先生の講演では、性教育と人権教育が大切で、子どもたちが安心、安全で豊かな性を自らの力で選べるように、また子ども達には「良く来たね、そうなんや、またおいで」と伝えてあげて、困ったら行くところがあると知ってもらいたいと話していました。

リプロダクテイブ・ライツの考え方と人工妊娠中絶

木村正先生の講演は、世界的な情勢や海外のガイドラインを例に挙げていて、とてもわかりやすかったです。日本は少子化だが、第2次ベビーブームのあとなぜに3次べビーブームは来なかったのかというお話しから、少子化のため、人工妊娠中絶の適応を厳しくするか中絶禁止という意見も今後出てくるかもしれない。(実際に学会でそのような意見をのべた人がいたとのこと)それに関して、ルーマニアのチャウシェスクの政策で少子化対策として中絶を禁止して、どうなったかという事を例としてあげていました。子どもが捨てられて、孤児院が劣悪な環境であったためにそこから抜け出してマンホールで暮らした子ども達が大人になってギャングになっていった尾言うお話しでした。日本ではそこまでの事は起こらないでも、妊娠継続希望しない人が新生児を殺害するような犯罪に発展してしまうようなケースが増えてしまうように思います。実際の事例をあげて、新生児殺害で逮捕されると前科一犯となってしまう、でも早い段階で産婦人科につながっていればそのような犯罪者とはならずにすんだかもしれないとお話されていました。WHOは、安全な中絶は女性の人権と生命を守るSexual and Reproductive Health and Rightsを達成するために重要な要素としてガイドラインを出し、各国に中絶の合法化とそのアクセスを妨げる要因を取り除くことを求めています。そのような中絶に関する国際標準をまずは知るためのわかりやすい講義だったと思います。

私の思うところとしては、少子化対策には中絶禁止は絶対にあり得ないと思いますが、出産した女性と生まれた子どもに1000万円を支給するという事にしたら、出産する方はもっと増えるのではないかと思います。妊娠継続を希望しない場合には、日本では母体保護法にて経済的に困窮している場合には人工妊娠中絶がうけられることになっていますが、困窮しているかどうか年収をチェックするわけでもなく、医師の裁量が大きく認められています。そのためほとんどの方が、経済的な理由として人工妊娠中絶を行っています。実際に生活保護を受けるほど困窮はしていないけれど、子ども達にお金がかかるので、4人目は難しいとか3人は難しいという人もたくさんいます。そんななか、出産すると今よりもっと大金がもらえるようになったら、子どもを産もうと思う人はずっと増えるのではないかとお話しをききながらおもったりもしました。

ランチョンセミナ一 ひとごとではない性感染症

性感染症について一般的な話しから、早川先生が経験した症例まで詳しく報告してくれました。性器ヘルペスの迅速キットを早川先生が開発されたということで、お話しをききながらとっても感心しました。現在は診療の中でとても活用させてもらっています。

また、梅毒の症例もたくさん診ていらして、実際の症例をたくさん提示されてとてもべんきょうになりました。まだ梅毒はみたことがないので、実際には疑わしきはとにかく血液検査を積極的にする必要があるかとは思っているところです。

非常に鑑別が難しい症例もたくさん提示して下さってとても勉強になるお話しでした。

飛行機の時間の関係で、シンポジウムまではきけなかったのですが、とてもためになるセミナーに参加できて、今後の臨床の現場で役立てることができそうです。会場で販売していた資料もスタッフと共有して学びたいと思います。性暴力救援センター大阪SACHICOの作成した、産婦人科医療者むけ性暴力被害者診療マニュアルは、汚れてもさっとふけるようにと紙ではなく、プラスチックが使われており、装丁もかなり立派な物でした。日本財団から助成をうけて作成されたとのことでした。こちらも診療で活用したいと思っています。

また来年は第43回性教育指導セミナー全国大会in山形です。

2020年7月19日(日)会場山形テルサ 18日土曜日には市民公開講座山形県思春期ヘルスケアセミナー~つながる~

来年も行けるといいなあと思いつつ、今後も勉強していきます。

以上セミナー受講報告でした。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。