母乳育児と産後うつ

質問:母乳育児と産後うつは関係がありますか?

だれでもうつ病になる可能性がありますが、産後はそのリスクが高く、うつ病になった母親は子どもの世話をするのがたいへんになってしまいます。

産後のマタニティーブルー

産後は一時的にブルーな気分がおこったりすることがあります。その状態が長く続いて、不安、罪悪感、絶望、いらいら、気力がわかない、集中できない、食欲がない、眠れないなどがあると産後うつ病の可能性があります。母乳で赤ちゃんを育てることは産後うつ病のリスクを減らすと言われています。

母乳で育てている母親は、人工栄養で育てている母親よりも、うつ病にかかるリスクが低くなります。また、うつ状態の母親も授乳するという行為によってうつの症状が軽くなる可能性があります。その理由は母乳育児中にでてくるホルモンにあります。

母乳分泌のホルモン

授乳しているときに分泌されるオキシトシンというホルモンは、母親にとってリラックス効果があり、ストレスを減らします。母乳産生にかかわるプロラクチンというホルモンも、うつ病にかかりにくくする働きがあるようです。オキシトシンホルモンは愛のホルモンとも言われており、人を信頼する力を高めてくれます。

睡眠

人工栄養や混合栄養で育てている母親にくらべて、母乳だけで育てている母親のほうが、睡眠がとれるということが報告されています。睡眠時間がとれるのでうつのリスクが減ります。

親子の絆作り

母乳育児をすると自然と子どもとのスキンシップが増えていきます。お母さんと赤ちゃんの絆がしっかり作られるとうつのリスクが減ります。自然な赤ちゃんとの触れあいは赤ちゃんにもお母さんにもとてもよい効果をもたらします。

母乳育児には多くの利点があり、少なくとも何らかのうつ病予防にもなることがわかっています。

妊娠中、産後の栄養

産後の亜鉛や鉄不足は、産後うつ病のリスクをあげるという報告があります。妊娠中も産後も是非しっかりと栄養をとるようにしましょう。また、2020年5月のーストラリア・ディーキン大学のRachelle S. Opie氏ら論文報告では、出産後の女性の食事と産後の健康的な食事に対する理解があるということが産後うつ病の症状の少なさと関連していると指摘しています。また、果物、野菜、魚、穀物、豆類、ハーブに重点を置いたバランスの取れた食事は、産後うつ病発症率を低下させることに役立つ可能性があるとのことです。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。