鉄剤内服は身体に良くないと聞きました。貧血でいるのと鉄剤を摂ることはどちらがリスクが高いでしょうか??

妊婦さんのための栄養講座DVD受講された方からの質問をご紹介します。

質問:妊婦が貧血を起こすのは生理的現象であり妊婦が鉄サプリや鉄剤内服で鉄過剰になると、産まれてくる子供が1型糖尿病になると文献で読んだことがあるります。また鉄剤を摂ると、体内のフリーラジカルも増え感染症にかかりやすくなるとのことですが貧血でいるほうがリスクが高いのでしょうか?

答え:一般的に市販の鉄サプリや保険で処方される鉄剤は非ヘム鉄が多いです。鉄を摂取すると活性酸素が体内にたくさん発生します。その中でも人工的で吸収効率のあまり良くない非ヘム鉄をとると、より多くの活性酸素が体内に発生します。

人間は、組織の集合体で、組織は細胞の集合体です(人間は約60兆個もの多くの細胞から構成されています)。そして細胞は様々な分子の集合体です。分子構造中には電子があります。電子は2つ1組=対の構造で安定します。しかし、対になっていない電子を持つ分子が存在し、それがフリーラジカルです。対でない電子は不安定なので、他の分子から電子を取って対になり安定しようとします。今まで安定だった分子は、電子を1つ取られたことにより不安定になります。人間が呼吸するとこのフリーラジカルである活性酸素が発生するのですが、過剰すぎるフリーラジカル活性酸素は体を錆びつかせていく原因となるので、老化現象を促進させる作用もありますし、様々な病気を引き起こす可能性があります。私は妊婦さんが鉄過剰だと、子どもがI型糖尿病になりやすいという文献については知りませんが、体内の過剰な鉄はあらゆる病気を引き起こす可能性があります。また活性酸素も心配です。

では妊婦さんは鉄のサプリやお薬は飲まない方が良いのでしょうか。私の意見としては、妊娠中や産後には鉄不足であれば鉄を食事からだけで無く、薬やサプリメントで摂取する必要があると思います。というのは、妊娠中や産後はとてもたくさんの鉄が必要だからです。また、妊娠中の鉄不足は胎児の発育発達を邪魔したり切迫早産のリスクを上昇させる可能性があります。また、お産時に貧血だと多量出血に耐えられずに命の危険があったり、輸血が必要となるリスクがあります。お産では必ず出血は起こりますが、時には子宮の収縮が悪くて多量出血が起こることがあります。ですから、妊婦さんは鉄不足を避けるためにも鉄剤やサプリメントをとる事をおすすめします。

でも、保険処方鉄剤は非ヘム鉄で活性酸素の過剰な発生が心配です。また、市販の鉄サプリは鉄の量がとても少ない粗悪品が多いのでおすすめしません。ヘム鉄と宣伝されていてもその量はごくわずかだったり、ヘム鉄の量がヘム鉄そのものではなく、原料の重さで示されていることもあるそうです。では、保険の鉄剤は副作用で飲めない、もしくは、活性酸素が心配という方はどうすると良いのでしょうか。おすすめは医療機関専用のサプリメントや身体に負担のない鉄のサプリメントです。当院ではいくつかの種類の鉄のサプリメントを取り扱っています。医療機関専用サプリメントのヘム鉄やフローラディクスなどです。フローラディクスはインターネットでも販売されていて購入可能です。https://yoihibi.jp/category/ITEM_SUPPLE/FLRDIX.html
ただ、このようなサプリメントは値段が高いのが問題です。ですので、費用負担が心配であれば、保険処方鉄剤を必要最小限で摂ることをおすすめします。シロップ剤は量を調節してとる事も可能です。ただ、鉄剤の副作用にむかつきや便秘や下痢などがおこることがあります。もし吐き気で鉄剤を飲めないという状況がある場合に、鉄剤を注射する方法がとられることがありますが、これだけは避けた方が良いです。内服であれば鉄服用で体内に活性酸素が発生してもそこまで状況は深刻になりませんが、注射してしまうと過剰な鉄が体内に蓄積してその害はとても大きくなります。ですので、鉄の注射は是非避けましょう。また、市販で売られているサプリメントは鉄含有量が少なかったり、添加物がたくさん含まれていたりするので、避けるべきです。また、鉄入りドリンクなどは砂糖や人工甘味料などがたくさん含まれていることが多いので、添加物の害が心配となります。もし保健処方の鉄剤が飲めない場合や貧血予防をしたい場合には多少お金がかかってもきちんと信頼のおける医療機関推奨のサプリメントや添加物の少なく、効果が得られる良いサプリメントをとる事をおすすめします。

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鉄欠乏性貧血、かくれ貧血、検査結果のみかた

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鉄不足改善のための栄養について

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鉄欠乏性貧血と鉄不足の原因と対策について

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この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。