熱は敵じゃない──「症状=治療」から学ぶ身体の智慧と脚湯のすすめ
風邪をひいて熱が出たとき、「早く解熱剤を飲まなきゃ」「頭が痛いから鎮痛剤を…」と、私たちは反射的に“症状を抑える”ことを考えがちです。
でも、ちょっと待ってください。
本当にその症状、すぐに取り除かないといけないものでしょうか?
もしかしたら、その「つらさ」は、身体が治ろうとしている大切なサインかもしれません。
症状は“敵”じゃない。「症状即療法」という考え方
「症状即療法(しょうじょうそくりょうほう)」という言葉をご存じですか?
これは、出てくる症状そのものが、治療でもあるという意味です。
たとえば──
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熱が出る → 体温が上がり、免疫力が高まっている
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寒気がする → 熱を上げるための準備反応
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鼻水が出る → 老廃物やウイルスを外に出している
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頭が痛い → 血流の変化による反応
これらは身体がバランスを取り戻そうとする自然なプロセスであり、
むやみに抑えてしまうと、かえって回復を遅らせてしまう可能性があります。「症状は治るためのプロセスである」と捉える視点が今、あらためて注目されています。
解熱剤で熱を下げる?ちょっと待って。
熱は、私たちの身体が病原体と闘い、免疫を総動員して治そうとするときに出る「自然な反応」です。このとき、体内では白血球やリンパ球が活発に働き、「インターフェロン」などの免疫物質が作られています。つまり、熱は体が自己治癒に向かって本気で動き出したサイン。それを薬で抑えてしまうと、体は本来の力を発揮できず、かえって治りが遅くなってしまうこともあるのです。
熱が出る理由──身体は治ろうとしている
熱が出ると、体温が上昇します。すると何が起きるでしょうか?
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心拍数(脈)が早くなり、血流が良くなる
→ 身体のすみずみまで酸素と栄養が行き渡り、老廃物が流れ出しやすくなります。 -
足などに滞っていた血液が心臓に戻りやすくなる
→ 酸性に傾いた血液がアルカリ性に近づき、体内環境が整ってきます。 -
免疫が活性化し、インターフェロンが分泌される
→ インターフェロンは、ウイルスやがん細胞の増殖を抑え、免疫細胞の活動を助ける“体内の戦士”です。
つまり、熱が出る=身体が総力をあげて治ろうとしているサインなのです。
インターフェロンってなに?
インターフェロンとは、ウイルスに感染した細胞から放出されるタンパク質の一種です。
この物質は、まわりの細胞に「ウイルスに備えろ!」と警告を出し、免疫を活性化させる働きを持っています。インフルエンザや風邪などのウィルス感染が起こって、高熱が出たときには、このインターフェロンの産生が盛んになります。ところが、解熱剤で熱を下げてしまうと、インターフェロンが十分に作られなくなってしまうのです。だからこそ、熱が出たときは、「ありがたいな、体が治そうとしてくれているな」と、むしろ感謝して迎えることが大切です。
「寒気がしたら裸になる」!? 西式健康法の意外な発想
西式健康法では、「寒気がしたからといって、服を着込むのは逆効果」と考えます。
寒気は、身体が熱を上げようとしている前段階。
そのときに厚着をすると、外からの熱で身体が温まりすぎ、内からの発熱反応が鈍くなってしまうのです。一方、熱が上がりきって暑くなってきたときこそ、
発汗を助け、熱を逃がさないようにしっかりと着込むべきだと教えます。これも「身体の反応に逆らわない」という自然医学的な考え方なのです。
「症状即療法」──症状をそのまま“療法”とする考え方
西式健康法を提唱した西勝造氏や、その思想を継承した甲田光雄医師は、
「病気は生活の誤りから生まれる」「症状はその修正プロセスだ」と述べています。
頭痛・発熱・咳・下痢・吐き気などの症状は、身体が毒素を排出し、バランスを取り戻そうとする大切な反応です。それらを抑えるのではなく、「ありがたいお知らせ」として受け取り、正しい生活習慣に改めていくことが根本的な回復につながります。
西式健康法の「脚湯法(足湯)」で血行を助けよう
「熱を大切にする」とはいっても、症状がつらいときはやっぱり何か助けが欲しい。
そんなときにおすすめなのが、西式健康法でもすすめられている[脚湯法(きゃくとうほう)]です。
■ 脚湯法とは?
・バケツや洗面器に足をふくらはぎのところまで湯につけ、膝から上は毛布またはかけ布団で多い、汗をかかせる。40度5分間、41度5分間、42度5分間、43度5分間、脚湯の時間を20分として、40度から5分ずつ1度ずつあげていく。脚湯の器内の温度が一定になるようにかき混ぜる。20分間のお湯が終わったら、次は冷水につける。14度なら2分、16度なら2分半、18度なら3分半を一回だけ。※かならず冷水にもつけましょう。
■ 脚湯の効果
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足の血行がよくなり、冷えや血液の滞りを改善
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発汗を促し、老廃物や毒素の排出を助ける
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神経がリラックスし、自然治癒力が高まる。
症状はありがたい「お知らせ」
仏教には「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」という言葉があります。これは悩みを否定するのではなく、受け入れるとそこから悟りに向かうことができるという言葉です。同じように、身体の様々な症状も否定するのではなく、それを受け入れて、「身体からのありがたいお知らせ」と考えていくと、根本的な病気の解決に向かうきっかけとなる可能性があります。身体が今、何を求めているのか。薬で抑える前に、症状の意味を受け止める姿勢が、本当の治癒への一歩になります。病気も同じで、生活や心の在り方に気づきをもたらす“ありがたいお知らせ”と捉えることができます。
「症状=治療」──西式健康法の核心
西式健康法の創始者・西勝造氏は、「病気の症状そのものが、治ろうとする力の現れである」と説きました。
「症状は敵ではなく、体が自ら治ろうとする『自然な働き』である。
だから、症状を無理に止めることは、治癒の妨げになる。」
たとえば、発熱は体温を上げることで免疫細胞を活性化させ、ウイルスや細菌と戦うための反応です。鼻水や咳、下痢は、体内の老廃物や毒素を体外へ排出しようとする反応。
つまり、「不快な症状=排毒反応=治療」ということ。これが「症状即療法」の考え方です。
甲田光雄先生の実践:「症状はありがたい」
西式健康法を実践・発展させた医師、甲田光雄先生もこう述べています。
「症状が出るのは、身体が悪いところを治そうとしている証拠。
熱も痛みも、体が出してくれている“ありがたい知らせ”なんです。」
甲田先生は、断食療法や玄米菜食を取り入れながら、身体の内なる力に耳を傾ける医学を実践し、多くの重症患者を回復へと導きました。
特に、慢性病や生活習慣病、さらにはがんに対しても「生活の見直しと自己治癒力の活用」を基本としました。
西式甲田療法で様々な病気を治した甲田光雄先生の言葉
病気というものはね、その人の今までの生活状態や心の持ち方、食べ物の摂り方など生活の誤った部分が重なって出てきたもので、色々なつらい症状も、つまり誤った生活に対する天から与えられたありがたい「お知らせ」ですよ。だから病気を治そうと考える前に間違った生活をまず反省して、正しい生活に入っていくことが先決だね。
五井先生が言っておられるように、病気というものは自然に消えていくものなんだ、そういうふうにはっきりと病気の本体をつかまえなければならない。病気というものは決して恐れる必要はない。消えてゆく姿である、と信じ切りなさい。
だから私のところでは 「病気を治す」ということより「病人をどうすべきか」を先ず考えるのです。「心身は一者」ですからね。
※五井昌久先生は宗教家で、世界平和運動「世界人類が平和でありますように」を提唱した方です。。
このような信頼と感謝の心が、私たちの自然治癒力を最大限に引き出してくれるのです。
安保徹先生:「症状は治るときに起こる」
新潟大学名誉教授の安保徹先生も、病気のメカニズムを免疫学の視点から紐解きました。
「病気が治るとき、体は一時的に不快な症状を出す。
それを“治癒反応”と呼ぶ。
その反応を薬で抑えてしまうと、体が治るチャンスを逃してしまう。」
安保先生は、白血球のバランス、自律神経の働き、低体温やストレスとの関係などを明らかにし、「現代人は“症状”を敵と誤解している。治癒のメカニズムを信じよう」と提唱しました。
病気を通じて、私たちは「生き方」を見直す
病気は、「薬でどう抑えるか」ではなく、「なぜ起きたのか」「どう生きるべきか」を考えるきっかけです。食生活、睡眠、運動、そしてストレスや心の持ち方。
身体はいつも、正直に“今の自分”を教えてくれています。
まとめ:自然治癒力を信じ、症状に感謝を
- 熱が出るのは、体が治そうとしている証。
- 無理に解熱すると、インターフェロンなどの免疫物質が作られにくくなる
- 「症状は治療」= 症状即療法 の考え方を持とう
- 西式健康法の「脚湯法」は、発熱時に自然な血行促進で、免疫力を邪魔せずに、熱をさげてくれる可能性があります。
- 心のあり方も、身体の回復に深く影響する。
- 西式健康法の「症状即療法」は、症状を抑えず、体の働きを信じて見守る智慧。
- 発熱・頭痛・咳・下痢は、体の「排毒反応」であり、治癒の一部。
- 「病気を治す」よりも「人を癒す」姿勢が、根本的な健康を導く。
最後に
今の医学は驚くほど進歩していますが、私たちの身体に本来備わっている**「自然治癒力」**という智慧を忘れてはいけません。
薬や手術に頼ることだけが「治療」ではありません。
身体が治ろうとする働きを信じ、正しい生活、正しい心の持ち方を大切にすることが、本当の意味での“癒し”です。
※このコラムは医療行為を否定するものではありません。必要なときには適切な医療を受けながら、自己治癒力を最大限に引き出すための一助としてご活用ください。
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