子どもの携帯電話・スマートフォン利用と健康リスク
――発達期の脳は大人より影響を受けやすい
スマートフォンが生活の中心になり、子どもが日常的に利用する場面も増えています。しかし、成長期の子どもと大人では、身体の状態が大きく異なります。特に「細胞分裂の速さ」「脳の発達段階」という観点から、電磁波の影響について慎重な姿勢が必要だと言われています。
成長期は細胞の「コピーミス」が起こりやすい?
私たちの身体は、毎日大量の細胞が生まれ変わる「新陳代謝」によって保たれています。
新陳代謝が活発なほど、細胞分裂が頻繁に行われるため、DNAの“コピーミス(複製エラー)”が起こる可能性も高くなります。
これは、身体が完成した大人よりも、成長期の子どもの方が細胞分裂が活発であるため、外部からの影響を受けやすいということを意味します。
携帯電話の電磁波については、動物実験や一部の細胞研究で、
DNA損傷やコピーミスを引き起こす可能性を示唆する報告もあります。
一方で、大規模な疫学研究では「決定的な因果関係は確認されていない」とされており、
現在も研究が続いています。
電磁波は体内で“フリーラジカル”を発生させる?
電磁波を浴びた細胞の中で、フリーラジカル(活性酸素)が増えるという報告もあります。フリーラジカルは、通常の代謝でも生まれる物質ですが、過剰になると細胞の膜やDNAを傷つけ、老化や疾病のリスクを高めるとされています。
ただし、これも「携帯電話の電磁波がどの程度フリーラジカルを増やすのか」という点については、研究者の間でも議論が続いており、明確な結論には至っていません。
携帯電話の電磁波は“頭に密着”しやすいことが問題
電磁波は、電子レンジ・Wi-Fi・家電など、生活のあらゆる場面で発生しています。
しかしその中でも携帯電話は「頭部と密着して使用する」という点がもっとも特徴的です。特に成長期の脳は、頭蓋骨が薄く、水分量が多く、電磁波の影響を受けやすい構造をしています。そのため、強い根拠はなくても「発達途上の脳を不必要にリスクにさらさない」という予防的発想が重要です。
健康影響はすぐには現れない――だからこそ慎重に
病気、とくに腫瘍はでき始めてから発症するまで10~15年以上かかることが多いと言われています。つまり、今子どもが使っているスマートフォンの影響が、実際の健康影響として現れるのは、はるか未来になる可能性があります。
「今は問題がない」「因果関係は証明されていない」という理由だけで、
子どもの頭部に毎日スマホを密着させる使い方を続けるのは、慎重であるべきでしょう。
海外では子どものスマホ使用を制限する動きが拡大
- フランス:小・中学校でスマホ持ち込みを原則禁止。授業中は電源オフで保管。
- スペイン:健康警告ラベルの検討や、未成年のスマホ依存対策を国家戦略として議論。
- シンガポール:0〜12歳向けのスクリーンガイドラインを国が公表。
- オーストラリア:複数の州で学校内スマホ禁止。SNSの利用年齢制限も議論中。
- オランダなど:15歳未満のSNS利用制限を政府が勧告。
“完全に避ける”ことは不可能。でも、リスクを知って距離を取ることはできる
私たちが現代社会で暮らす限り、電磁波をゼロにすることはできません。Wi-Fiも家電も街のインフラも、日常生活には欠かせません。しかし、「どれだけ身体に近づけるか」「どれだけ長時間使うか」を工夫することで、リスクを減らすことはできます。
今日からできるシンプルな工夫
- 通話はスピーカーやイヤホンを使い、頭からスマホを離す
- 子どもや妊婦さんは、お腹・胸・頭にスマホを密着させない
- ズボンの前ポケットや枕元での保管を避ける
- 就寝前1〜2時間はスマホを見ない
- 必要のないときは機内モードやWi-Fiオフを活用する
科学は日々進歩しており、今後さらに精密な研究によって新しい知見が得られる可能性があります。だからこそ、「危ないと証明されてから対策をする」のでは遅いかもしれません。携帯電話との距離の取り方を見直すことで、子どもたちの未来の健康を守るための一歩になります。
参考:
- Hardell L, Carlberg M. 携帯電話使用とグリオーマリスクに関する症例対照研究。
- PLOS ONE. 携帯電話電磁波とDNA損傷・細胞影響に関する報告を含むメタ解析。
- COSMOS研究(欧州)。大規模追跡研究による現時点での脳腫瘍リスク評価。
- WHO/IARC. 高周波電磁界を「発がんの可能性あり(2B)」に分類。
- フリーラジカル生成に関する各種細胞研究・レビュー。
- フランス、スペイン、シンガポール、オーストラリアなど各国のスマホ利用ガイドライン。


