月経カップについての報告のご紹介

月経カップについての報告が、「The Lancet Public Health」7月16日オンライン版に掲載されたとニュースに出ていました。

月経カップとは:

月経血を腟に挿入して月経血をためておき、4~12時間ごとにカップに溜まった血を捨てて使用するというもの。シリコン製のものが多い。使い捨てでないので、頻繁に購入する必要がなく、コストもかかりません。

報告では、199ブランドの月経カップが特定されたとのことです。また、月経カップを使用した際に経血が漏れる程度や安全性、受け入れやすさなどを他の生理用品と比較されました。そして、月経血がもれてしまう程度は、月経カップとナプキンやタンポンの間に差はないか、月経カップの方がより少ないという報告もあったそうです。

問題点について:

膣炎などの感染症のリスクも上がらず、月経カップを使用しても腟内細菌叢への悪影響もあまり無かったという報告があった一方で、月経カップの取り外しが難しいという報告はありました。(月経カップが取れなくなって病院へ行ったという方もいるようです。)これは、タンポンでも同じ事が起こりえますよね。また、月経カップの使用に伴う痛みは5人、腟の傷は3人、アレルギー反応または発疹は6人、尿路症状は9人がそれぞれ報告されています。さらに、月経カップ使用後の毒素性ショック症候群が5人にみられたとのことです。ですが、全体の使用者数不明の報告であったとのことで、そのリスク頻度などの詳細は不明です。また、子宮内避妊具挿入1年以内の方で、月経カップ使用後に子宮内避妊具の脱落がおこった方がいたそうです。

月経カップの認知度:

月経カップは、日本でも世界でもまだまだあまり知られていないようです。でもとても便利で地球環境にも優しいグッズなので、今後もっと広まっていくと良いなあと思います。報告では、月経に関するオンライン教材で、月経カップを紹介していたのは少数であったという事でした。

感染のリスクを減らすために

膣内に異物をいれるという点では、月経カップよりタンポンのほうがリスクは高いと思います。それでも膣内での感染症を防ぐためには使用の際にはよく手を洗って、カップを挿入することと、それぞれのカップでの推奨の使用時間を超えないようにしましょう。月経カップは通常の洗浄でよいかと思いますが、そこでエピオス水で消毒して使用した方がより安全かもしれません。(エピオス水は別コラムでまたチェックしてみてください。)

※毒素性ショック症候群:

TSSとは、黄色ブドウ球菌の産生する毒素が原因で起こる急性疾患突然の高熱を伴って発疹・発赤、倦怠感、嘔吐、下痢、粘膜充血などが起こる病気で、早急に対処しないとショックになることがあります。手についた黄色ブドウ球菌が長時間の使用で膣内で増えて、トキシックショック症候群が起こることがあります。月経カップ使用でも起こる可能性はありますが、具体的な数字はありませんが、タンポンの長時間使用よりはシリコン製のカップの方がはるかに安全だと思われます。

THE LANCET Public Health Menstrual cup use, leakage, acceptability, safety, and availability: a systematic review and meta-analysis

ARTICLES| VOLUME 4, ISSUE 8, PE376-E393, AUGUST 01, 2019

https://www.thelancet.com/journals/lanpub/article/PIIS2468-2667(19)30111-2/fulltext

月経カップ紹介コラムはこちら https://www.yuiclinic.com/information/2733/

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。