子宮けい癌ワクチンの副作用が心配です。(ぐしかわ看護学校学生さんからの質問)

質問:子宮がんワクチンの副作用に関する本を読み、子宮がんワクチンは危険なものだと思っています。様々な副作用の話も聞きますが島袋先生は自分のお子様にワクチン接種をしますか?もしくはしましたか?

答え:私には4人の子どもがいます。長女は公費接種が開始されたときには対象年齢をすぎていたので自費で、次女は対象年齢で公費を使って子宮頚癌ワクチンを接種しました。海外では男の子にも接種する国もありますが、今のところ、中学生と小学生の長男と次男には接種は考えていません。

子宮頚癌ワクチンの副作用で問題が起こっているという意見があるのは事実です。ですが、実際にそれが副作用ではないと世界的には証明されています。

神奈川県医師会が作成した、子宮頚癌とHPVワクチンについてという冊子はとてもわかりやすいです。http://www.kaog.jp/wp/wp-content/uploads/2020/07/sikyukeiganhpv.pdf

こちらの冊子から一部内容を抜粋します。

子宮頚癌ワクチン

子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンと検診で予防できるがんです。世界では子宮頸がんの排除*)に向けて、15歳までにワクチン接種率90%を目指した活動が始まっています。
日本ではどうでしょうか。平成25年4月に定期接種化されたものの、わずか2カ月後に厚生労働省は接種勧奨を差し控えるという発表をしました。その後も定期接種は継続し、小学校6年生~高校1年生相当の女子は公費(無料)で接種できるにもかかわらず、かつて約70%だった接種率は0%近くまで激減してしまいました。世界では、ワクチン接種によって、子宮頚がんの予防ができるようになってきており、また男子への接種の承認もすすんでいます。日本においても、厚生労働省の調査で、ワクチン接種後の「多様な症状」とワクチンとの因果関係は証明されませんでした。

子宮頸がんとは

子宮にできるがんには、子宮頸がんと子宮体がんのふたつがあります。ヒトパピローマ
ウイルス(HPV)ワクチンで予防が可能ながんは子宮頸がんです。子宮頸がんは子宮頸部(入り口付近)に、子宮体がんは子宮体部(子宮の奥の方)にできます。子宮頸がんはHPV感染が原因となっており、20~30歳台の若い女性に多いという特徴があるのに対して、子宮体がんはエストロゲン(女性ホルモン)が関係しており、50歳台以上の女性に多いのが特徴です。

若い女性に多い子宮頸がん

日本では、年間約1万人が子宮頸がんに罹患(病気にかかる)し、約2,800人が子宮頸がんのために亡くなっています。また、罹患する人の年齢がだんだん若くなる傾向にあり、44歳以下で子宮頸がんのために亡くなっている人は2017年には294人いました。若い年代で子宮頸がんに罹患した場合に手術や放射線治療をすることで命が助かったとしても、子宮や卵巣の機能を失うことで妊娠することができなくなってしまうこともあります。また、患者さんが小さい子どものお母さんであることも多く、子どもを残して亡くなっていくこともあります。

子宮頚癌は治るか?

残念ながらすべての方が治る病気ではありません。病気が見つかってから、治療でどれだけ命が助かるかという事を示す目安の5年相対生存率は、女性特有の他のがんと比較すると、乳がんの5年相対生存率は91.1%、子宮体がんは81.1%ですが、子宮頸がんの5年相対生存率は73.4%です。(卵巣がんは58.0%)。
子宮頸がんで大事な子宮や卵巣機能、そして命を失わないためには、HPVワクチンでの感染予防と子宮がん検診での早期発見が重要となります。

HPV 感染と子宮頸がん

子宮頸がんのほとんどは HPV 感染が原因となっています。HPV は100種類以上の型が
あり、30~40種類が性的接触によって感染します。その中で、発がん性のある高リスク型
(16/18/31/33/35/45/52/58など約15種類)と、尖圭コンジローマなど良性のいぼの原因となる低リスク型(6/11型など)があります。最大80%の女性が生涯のうち一度はHPVに感染すると報告されています。HPVは性的接触で子宮頸部(入り口)の粘膜の細胞に感染し、細胞の変化(軽度異形成)を起こしますが、多くの場合は免疫の働きなどによってウイルスは排除されます。何らかの原因でウイルスが排除できずに持続的に感染を起こすと中等度~高度異形成(前がん病変)となり、その一部が子宮頸がんに進行します。HPV感染が起こった女性のうち子宮頸がんを発症するのは0.1%程度と推計されています。

発がん性のある高リスク型HPVの中でも、16型、18型は日本の子宮頸がんの70%程度を占
めていると報告されています。この16型、18型は日本ですでに使うことのできる2価と4価のHPVワクチンで感染を予防することができます。また、2020年7月に発売開始された9価ワクチンでは90%の子宮頚癌を予防することができると言われています。

HPV ワクチンの安全性

WHOは世界中の最新データを継続的に評価し、2017年7月には、HPVワクチンは極めて安全であるとの見解を改めて発表しています。その中で、HPVワクチンは2006年から2017年までに2億7000万回(現在までに8億回10))の接種が実施されたこと、世界各国における大規模な調査においても、非接種者と比べて頻度の高い重篤な有害事象は見つかっていないことを報告しています。また、ワクチン接種後に痛みが続いたり、身体がだるくなって動かなくなるなどのような病気との関連が心配されていますが、そのような症候群との関連はないことも報告しています。妊娠、分娩、胎児奇形への影響も認められないことも報告しています。

日本でも、厚生労働省の調査で、ワクチン接種後の「多様な症状」(頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛、筋力低下、運動障害、認知機能の低下、めまい、月経不順、不随意運動、起立性調節障害、失神、感覚鈍麻、けいれん等)は、「機能性身体症状」であると確認され、ワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されませんでした。
また名古屋市で行われたアンケート調査でも、24種類の「多様な症状」の頻度がHPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子で有意な差がなかったことが示されました。つまりHPVワクチン接種と24症状の因果関係は証明されなかったことになります。

マスコミの報道によって、子宮頸がんワクチンは危険な者であるという誤った認識から予防接種が推奨されずに今に至ってきていますが、この間にも多くの人が子宮頸がんにかかる可能性があります。ワクチン接種をしなくても10代の女性にこのような症状がおこることがあり、ワクチンによって救える命があることから、HPVワクチン接種をお勧めします。

10 万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか

著者:村中璃子氏は、日本人初のジョン・マドックス賞受賞されています。

世界中で使われ安全性が保障されているワクチンが、なぜ日本でだけ激しい副反応が出ているのか、医師でありジャーナリストでもある村中璃子氏は疑問をもち取材を始めました。2015年10月に最初の記事がビジネス誌「Wedge」に掲載。その後も真実を伝える執筆活動を続けていましたが、村中氏と家族には山のような脅迫のメッセージが届き、メディアの連載はすべて打ち切られ、書籍の刊行も中止となりました。しかし、村中氏の活動は世界的に評価され、2017年11月に英国の科学雑誌「ネイチャー」などが主催するジョン・マドックス賞を日本人で初めて受賞しました。障害や敵対にあいながらも健全な科学とエビデンスを広めるために貢献した個人に与えられる名誉ある賞です。日本では毎年、子宮頸がんで約2,800の命と1万の子宮が失われています。もしこのままHPVワクチンの接種勧奨が再開されず、接種率低迷が10年続けば、「10万個の子宮」が失われることになります。現在接種勧奨が取り消されてから7年が経過しています。接種勧奨再開にむけて少しずつ動いていますが、正しい理解が大切だと考えます。

ネットで検索すると、村中璃子氏のスピーチが読めます。https://note.com/rikomuranaka/n/n64eb122ac396

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。