禁煙って楽しい!!(禁煙アドバイザー講習会)

先日、禁煙アドバイザー講習会に参加してきました。ゆいクリニックでは、禁煙外来を開院当初から行っています。

病院で働いていた時、妊婦さんやそのご家族が禁煙をしたいという場合、内科の禁煙外来に紹介していました。

でも、禁煙の様子など、詳しい状況はわからず、自分で禁煙サポートをやりたいと思っていました。

禁煙外来は医師の専門にかかわらず、特に内科でなくても何科の先生でも開設することが出来るんです。

そこで、開業するにあたり、禁煙外来も同時に出来るようにしました。以前、妊婦さんとパートナーさんが一緒に禁煙外来に通われて、二人一緒に禁煙出来たときには、禁煙外来をやっていて、本当に良かったと思いました。

また、ゆいクリニックでは妊婦さんやそのご家族にかぎらず、禁煙をしたい女性や男性の方も通院されます。

産婦人科と標榜していますが、そういうことで、男性お一人で受診される方もいるのです。

他にも、プラセンタ療法や、上咽頭擦過治療、点滴療法などで、女性に限らず、男性でも通院されている方がたくさんいます。

受診の際に、男性の方が待合室にいる場合にはゆいクリニックには男性の方も受診されるのだなあとご理解いただけるとうれしいです。

そして、禁煙外来を行っていく上で、知識をアップデートするのにとても大切な機会が、禁煙アドバイザー講習会です。

全国で行われていますが、今回は沖縄で開催されたので、リアルで参加してきました。

禁煙外来の紹介。

禁煙治療

現在はインターネット禁煙マラソンは新規の受付は休止中です。

三次喫煙 サードハンドスモーク残留受動喫煙

一次喫煙は本人が吸い込むたばこの煙、二次喫煙は漂うたばこの煙で受動喫煙のこと、三次喫煙は部屋の壁や喫煙者の服、髪の毛などに付いた、目に見えないガス状の有害成分のこと。また吸った後の吐く息に含まれる有害物質も含まれます。

企業などでは喫煙後45分間は立ち入り禁止のルールを設けているところもあるそうです。ゆいクリニックでも喫煙者の家族がいた場合には、喫煙後は45分間は新生児に近づかないように案内をしています。

今回も、禁煙アドバイザー講習会での京都大学で禁煙外来をされている高橋裕子先生の講義を紹介します。高橋裕子先生は、日本着物学会の会長やネコ検定上級保持者とのことです。

以前講習会に参加したときの報告

第256回全国禁煙アドバイザー育成講習会に参加しました。

「タフスモーカー対策と新型タバコの最新知識」京都大学大学院 医学研究科:高橋裕子先生

日本禁煙科学会の成り立ちについて

日野原重明先生と一緒に設立されたそうです。禁煙科学会の子どもの禁煙研究会もとても重要な役割を果たしています。高橋裕子先生は、31年前に日本で初めて禁煙外来を開設されたそうです。

日本人の喫煙率

日本人の喫煙率は?・・・約15%(男性25%、女性6%)喫煙率は減少傾向だけど、令和4年から5年にかけて喫煙率が増えたというデータがあります。加熱式たばこ、電子タバコならよいのではないかと、喫煙を許してしまっている状況から喫煙率が増えてしまっているのでは無いかと言うことです。

喫煙対策がゆるくなってしまっている。タバコは依存性疾患だから、禁煙していても、対策がゆるくなると再喫煙のリスクがあり、喫煙対策は継続していかないといけないのです。

40〜50代男性の喫煙率が高いことも問題です。また、20代30代は加熱式タバコが多い。

タフスモーカー

現在喫煙している人たちは、禁煙意思をもっている人が少ない。やめたいと思っていない。やめられないし、やめなさいと言われると反発がでてくる。こういう喫煙者をタフスモーカーとネーミングされています。

何歳からでも禁煙は健康に良い!

喫煙をやめると高齢者でも、寿命の延長に効果がある。ということで、何歳でやめてもメリットがある。たとえ数ヶ月でも、はいはいしている赤ちゃんが歩けるくらいの期間の延長と考えると大きいのでは無いか?

喫煙防止教育

高橋先生のライフワーク「子どもの禁煙」

はじめての小学生の喫煙への禁煙支援は1996年だったそうです。当時はニコチンパッチという薬もなく、認知行動療法という手法で禁煙をサポート。タバコを吸いたいから修学旅行に行きたくないという小学校6年生、怖い写真をみせてタバコをやめさせるといわれて、禁煙外来に連れてこられた。タバコは怖い物だとおしえたらやめられるという考え方があるが、依存症なので、怖がらせてもやめられない。

認知行動療法で、女の子のおばあちゃんが禁煙して、タバコを吸っていた6年生の女の子もその後禁煙することができて、無事に修学旅行に行けました。当時はニコチンパッチが使えなかったけど、認知行動療法で禁煙できたのだそうです。真面目で普通な子でも、タバコを吸い始めると、あっという間にニコチン依存になってしまう。怖い話よりも、禁煙する方法のほうが役にたつ。子どもたちが吸わないことが最も大切。知識、環境が大切。依存症にならないために、最初の一本を吸わないようにすることが大切。

喫煙率低下のために

入手困難(たばこの値上げ)、環境整備(喫煙場所の撤廃)、禁煙支援、教育啓発、これらが大切。

手に入らないようにすることは大切。オースオトラリアはタバコ一箱3000円。でも、今すぐ日本で実現できるのは、環境整備、教育啓発、禁煙支援。

タバコの値上げは未成年の喫煙率低下につながる。

でも、これは大学生以降に影響がある。小学生、中学生には影響をうけなかった。子どもたちは親からお金をもらってタバコを買っている。

喫煙防止教育の大切さ

小学校で喫煙防止教育をうけているか受けなていないかで成人式での喫煙率を調べた。金沢は小学校ごとで成人式をするので、データがとりやすかった。喫煙防止教育のあり無しで、成人での喫煙率に差がでていた。小学校での喫煙防止教育は効果があるということがわかり、正しい知識が大切だということがわかった。

中高生の喫煙は減っている。でも子どもの喫煙は将来の健康影響も起こってしまうので、まだ低いとはいえ未成年の喫煙は起こっているので、それを避けるべき。22歳までに喫煙者にならずにすごすと、ニコチン依存になりにくい。11歳までに初めてタバコを1回でも吸うと、依存症になりやすい。

奈良県は喫煙率の低さ全国一

NHKからも取材が高橋先生のところにきたそうです。奈良県の喫煙率の低下は、子ども達への教育が大きく関係していると考えられる。奈良県すべての小学校1年生に絵本の喫煙防止のための教材を配布して、親世代の教育をおこなった。それをきっかけに喫煙率が全国28位から3位に激減した。その後喫煙率の低さ全国1位になった。

禁煙は楽しい!

禁煙したい人は禁煙してしまって、禁煙できないタフスモーカーが残っている。禁煙は我慢の連続ではなく、楽しみの連続。

ストレスがへった、持ち物がへった。喫煙場所を気にしないでよい、ニオイを気にする必要がない。禁煙が絶対無理と思っていたらチャレンジする気にならない。禁煙が楽しくて良いものだと知ってもらう。

喫煙のリスクについて

脳卒中と喫煙リスクがある。脳卒中から介護が必要になり、ヤングケアラー(中高生が介護者になる)となるのを、禁煙で防ぎましょう。「テノゲカ」という漫画を紹介。

指の切断事故の際には、必ず喫煙者かどうか確認する。タバコを吸っている人は、切断事故から指が繋がらない。血管の状態や喫煙歴の有無に影響される。手術前4週間の禁煙が必要。そうでないと、心筋梗塞、脳梗塞が発症しやすくなる。いつ手術しても良いように、あらかじめ禁煙しておきましょう!

禁煙するのは難しいという喫煙者の思い込み。

手術前に高橋先生の外来に紹介されてきた喫煙者。手術前の禁煙をしたくないというので、術前に紹介されてくる。禁煙したくない、禁煙しないから手術しない。肺がんで死んだら本望だ、と言われてしまう。でも、その方も高橋先生の外来を受診して、無事に禁煙できて、手術も受けられたそうです。

京都大学の高橋先生の禁煙外来は、100%、全員禁煙している。全国平均での禁煙率は、ニコチンパッチでは5回受診したら82%の成功率。5回未満では3割の禁煙成功率。

高橋先生はニコチンパッチを全員につかう。高橋先生のところでは手術前にすぐに禁煙しないといけないので、ニコチンパッチを使っている。チャンピックスでは1週間後から禁煙で、それでは手術への効果がでない。ニコチンパッチはそれだけ効果を期待できる薬です。禁煙に薬物療法は必須ではない。でも薬物療法も効果的。

ニコチンパッチとバレニクリン(チャンピックス)の禁煙成功率に差はない。

数字の小さいたばこにダマされないで!

タールの量が少ないと宣伝されているたばこだと、その方が健康への悪影響が少ないのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、数字の小さいたばこの方が心筋梗塞のリスクがより大きいというデータがあります。

また、この計測方法はたったの60mlを器械で吸引して計測していますが、一回の吸気で通常喫煙者は約500ml吸い込むため、数字の小ささはあまり当てにならないと考えられます。さらにはニコチン量が少ないとより多くニコチンを吸い込もうとして、深く吸い込むため、肺腺癌が増えるというデータもあるそうです。添加物もよりおおくなっている場合があるそうです。

加熱式たばこ

加熱式たばこはタバコを燃焼させずに加熱するもので、タバコ葉を加熱し、ニコチンを含むエアロゾルを生成します。「アイコス」(フィリップモリス)、「グロー」(BAT)、「プルーム」(JT)などがあります。加熱部分は電気製品で、器械が高いのですが、互換品ということで正規品ではない安い商品も販売されるようになっているとのことです。加熱式たばこは受動喫煙が少ない、煙が出ないたばこと宣伝されていますが、実際には煙が出ていることが検査で分かっています。

目に見えないだけです。ほんのわずかでも健康に悪影響のある受動喫煙は避けるべきなので、加熱式たばこなら良いという事は無いですね。また、アイコスの製品説明には有害成分90%と宣伝されていて、いかにも健康被害が減るような印象を与える宣伝をしていますが、有害成分が十分の一に減ったからといって、健康被害も十分の一になるわけではないのです。

それはたばこの影響はほんのわずかでも起こってくるという理論から理解できるかと思います。たばこの有害物質は200種類以上も分かっている中で、その中の9つの有害成分についてだけ90%低減したと宣伝しています。けれどもニコチンは通常のたばこの84%も含まれており、9つの成分の平均値で90%低減としています。

さらには、有害成分が少ないからと言って健康被害が減るわけではないと小さく書かれていて、将来のたばこによる健康被害訴訟対策もばっちりという状況なのだそうです。煙が出ないので一酸化炭素は0ですが、健康への悪影響が減る物ではないし、煙も出ないし臭いも少ないから加熱式たばこにしよう、ではなく、禁煙するが正解ですね。

電子たばこ

電子たばことは、乾燥葉や液体を電熱線の発熱によりエアロゾル(霧状)化して、吸引する喫煙具とのことです。(ウィキペディアより)英語圏では、装置はヴェポライザー(英語版)とも呼ばれ、電子たばこによる吸入を俗にVape(発音:veip:ヴェイプ)と呼ぶとのことです。特徴は安価で、日本では薬事法によりニコチン入りは発売できないため、年齢制限無しで、ネット販売されているものです。水蒸気だけで、ビタミンも吸えると宣伝されており、まるで健康に良いものであるかのようにも、一見すると見受けられます。でも、様々な化学物質が含まれており、どんな有害物質がふくまれているか分からない危険なものです。

もともと違法薬物をいれて吸入するような道具を改良されて販売されており、違法薬物へと移行しないとも限りません。また海外販売の物にはニコチン入りのものもあり、ニコチン依存症のリスクもあります。爆発事故は3年間で2000件以上報告されており、死亡例もあるとのことです。イギリスでは、禁煙のために電子たばこを推奨しましたが、実際のデータとして、電子たばこを使い続けた人が18%、82%はまた通常のたばこに戻ってしまったとのことです。

禁煙できた人は0だったというデータもあります。禁煙のためにまずは電子たばこに切り替えるということが宣伝されていたりしますが、電子たばこに切り替えても有害物質のリスクや爆発事故のリスクがあり、禁煙は出来無い可能性が高いと考えた方がよさそうです。

新型タバコはすべて危険

リアルハイブリッドやシーシャ、ニコチンゼロタールゼロ等のタバコが発売されていますが、害が少ないという事は無く、すべて危険、手を出さないで、ということを皆が知っておくことが必要です。

今はまだ禁煙したいと思っていない人へ

たばこの害はみんな分かっていますよね。でもニコチン依存症で吸い続けてしまうのです。ですから、タバコは身体に悪いんですと言われてもそんなの分かっていると反発したくなりますね。ですから体に悪いことを聞くのではなく、禁煙したらこんな良いことがある、そして禁煙は難しい事ではない、そんなことが分かると一歩踏み出せるかもしれません。新しい事を始めるのは勇気がいりますが、禁煙のハードルは思っているほど高くありません。禁煙は難しい事ではありません。

また失敗しても挑戦する価値があります。自分の美容のため、お金のため、子どもの健康のため(受動喫煙はほんのわずかでの健康リスクがあるのですよね。)、禁煙への一歩を踏み出してみませんか?

ゆいクリニックでは、外来予約は必要ですが、禁煙外来受診に特別な準備は必要ありません。どうかお気軽に受診して下さい。

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この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。