“とるだけ育休”じゃない!お父さんの育児~お父さんにできる本当のサポート

父親の育児休暇取得率が近年増えてきています。育休をとることで、お父さんが育児に関わりやすい環境が出来てきました。でも、せっかく育休を取ったのに、「結局ほとんど何もできなかった」と後悔するお父さんも少なくありません。母乳育児や赤ちゃんのお世話は母親中心に見えますが、実は父親の家事や情緒的なサポートこそが、母乳育児の継続や家庭の安心につながります。本当の意味で「役立つ育休」を過ごすためのヒントをお伝えします。母親を支える家事協力や、赤ちゃんとのスキンシップは、母乳育児の継続や家族の安心感に直結します。育休を“家族の未来を育む時間”にすることができるのです。何をしたらよいのか分からない、にはお産前からの学びが大切です。

ミルクをあげることだけが育児参加ではない

お父さんが育休をとって、育児参加しやすくなってきている中、お父さんの育児参加の役割として、お母さんの代わりにミルクをあげること、というネット情報がみられるようになりました。「ミルクをあげる」ことで育児参加を実感しやすいかもしれませんが、お父さんに大切なのは、子どもの発達を最大限にサポートして、母親が楽しく育児できるように、母乳育児をサポートすることです。

お父さん(パパ)が赤ちゃんにミルクをあげたい!

母乳育児の良いところ

母乳育児の良いところ

 お母さんにとって

産後の出血量の減少、より早い子宮の復古
授乳性無月経による妊娠間隔の延長
産後の体重減少
病気のリスクの低下
産後うつ アルツハイマー病
2型糖尿病(妊娠糖尿病のある場合)
関節リウマチ、心血管系疾患、高血圧
高脂血症、閉経前乳がん、卵巣癌、子宮体癌

赤ちゃんにとって

健康 病気のリスク低下
下気道感染症(肺炎や気管支炎)、中耳炎
風邪、咽頭炎、胃腸炎、乳幼児突然死症候群、アレルギー性疾患(喘息、アトピー性皮膚炎、湿疹)、セリアック病、炎症性腸疾患、小児白血病、リンパ腫、早産児(敗血症、壊死性腸炎、発育不良、神経学的後遺症)
神経学的発達(より高いIQ)

出産前にお父さんがやるべき事

母乳育児について学ぶ:母乳はすぐにはでない(産後3~4日後から出始める)、授乳の頻度や授乳にかかる時間(2~3時間おき、多いときは1時間おき、一回の授乳も20分程度はかかる)、夜間授乳の大変さ(お母さんの睡眠不足)、母乳が出ている量はわからないこと。(尿や便の量や回数でのめているか推測する)

「母乳だと眠れない」は本当? 眠り方の工夫で変わる夜の授乳

夜間の授乳をミルクで行うのではなく、おっぱいを飲んでも眠れない赤ちゃんの寝かしつけを担当。お勧めは抱っこひもにいれてまん丸抱っこして、バランスボールで揺らしてあげる。

お父さんのサポート

情緒的関わり
  • 妻の母乳育児に対する自信を支える
  • 家族全体の精神的サポートにつながる
  • 直接おっぱいをあげられないからこそ、お母さんのねぎらってあげる。背中オイルマッサージもおすすめ。
家事・育児への協力
  • 授乳そのものではなく、家事分担・夜間の赤ちゃん対応が母親を支える
  • 父親の協力が長期的な母乳育児継続に影響

お父さんがお風呂担当になる

お父さんが赤ちゃんと一緒にお風呂にはいって、赤ちゃんと自然に肌と肌を触れあう。赤ちゃんのお風呂がおわったら、お母さんに赤ちゃんを渡して、赤ちゃんはお母さんからおっぱいをもらう。

早期接触とお父さんの早期接触について

お父さんの早期接触

お父さんの早期接触

帝王切開の早期接触

帝王切開後に早期父子接触を行ったところ、お父さんの赤ちゃんへの愛着が進んだという報告があります。また、お父さんが早期接触を行ったところ、その前後でお父さんの赤ちゃんへの愛着感がましたという報告もあります。

参考:

  • Nurs Res Pract. 2017;2017:8612024.
    (Skin-to-skin care 実施と Father-child-attachment score)

  • Health Soc Care Community. 2021 Sep;29(5):1502-1510.
    (帝王切開後の早期父子接触と父親の愛着)

お父さんの育児参加のメリット

  • お父さんの子どもへの愛着形成が促される
  • 自信が強化される
  • 夫婦関係の安定・幸福感
  • お父さんであることが幸せだ
  • 父親になったことで人間的に成長できた
  • 子どもと一緒にいることが幸せだと感じられる

お父さんもうつになる!

産後のマタニティーブルーや産後うつは、女性だけのものではなく、父親もうつになるという報告があります。育児休暇をとることで、社会から取り残されたとかんじてしまったり、なれない育児で睡眠不足になってしまうなどが考えられます。特に睡眠不足はうつのリスクをあげるので、夫婦で協力しながら、お互いにしっかりと睡眠をとるようにしましょう。特に母親は授乳によるホルモンサポートが得られやすいのですが、父親はホルモンサポートが少ない分、余計に気遣う必要があります。

参考:Nishimura A, Fujita Y, Katsuta M, Ishihara A, Ohashi K.
Paternal postnatal depression in Japan: an investigation of correlated factors including relationship with a partner.
BMC Pregnancy and Childbirth. 2015;15:128.

Nishigori H, Obara T, Nishigori T, Metoki H, Mizuno S, Ishikuro M, et al.
The prevalence and risk factors for postpartum depression symptoms of fathers at one and 6 months postpartum: an adjunct study of the Japan Environment & Children’s Study.
J Matern Fetal Neonatal Med. 2020;33(16):2797-2804.

まとめ

父親の育児参加は「ミルクをあげること」ではありません。家事や赤ちゃん以外のケアを担い、母親が授乳に集中できる環境を整えることが、最も効果的な支援です。また早期接触を頻繁に行うことでお父さんの子どもへの愛着形成が進んで、育児が楽しくなります。父親が主体的に関わることで、母乳育児の継続、母親の健康、そして家族全体の幸福につながります。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。