産後の血栓予防には、無理にでも体を動かした方がいいですか?~ぐしかわ看護学校生徒さんよりの質問と回答

ぐしかわ看護学校生徒さんよりの質問と回答

産後の血栓予防には、無理にでも体を動かした方がいいですか?

質問:
産後の血栓予防には無理にでも体を動かした方がいいですか??

回答:
産後の血栓予防のために体を動かすことは、とても大切です。ただし、「無理にでも動く」という考え方は少し注意が必要です。産後は出血、貧血、痛み、睡眠不足、帝王切開の傷の痛みなどがあり、体は大きな負担を受けています。そのため、無理をして急に動くのではなく、医師や助産師、看護師と相談しながら、安全に少しずつ動くことが大切です。

妊娠中から産後にかけては、体の中で血液が固まりやすい状態になります。これは出産時の出血に備えるための自然な変化でもあります。しかし、その一方で、足の静脈に血のかたまりができる「深部静脈血栓症」や、その血栓が肺に飛んでしまう「肺血栓塞栓症」のリスクが高くなります。特に産後は、しばらくベッド上で安静にする時間が長くなったり、帝王切開後で動きにくかったりするため、足の血流が滞りやすくなります。そのため、血栓予防には「早めに体を動かすこと」がすすめられます。

大切なのは「無理」ではなく「安全な早期離床」

産後の血栓予防で大切なのは、無理をして歩き回ることではなく、できる範囲で血流をよくすることです。たとえば、まだ歩けない時期でも、ベッドの上で足首を曲げ伸ばしする、つま先を上下に動かす、足を軽く回す、深呼吸をするなどの動きは血流改善に役立ちます。

自然分娩後で体調が安定していれば、トイレ歩行や短い距離の歩行から始めます。帝王切開後の場合も、最初は寝返り、足の運動、ベッド上で体を起こす、座る、立つ、少し歩く、というように段階的に進めていきます。

産後は「動いた方がよい」と言われても、痛みや不安があると動くのが怖いこともあります。そのような時は、我慢して一人で動こうとせず、必ずスタッフに声をかけてサポートのもとに動いていくことが大切です。最初の歩行は、ふらつきや転倒を防ぐためにも、看護師や助産師がそばについて行われます。

無理に動かない方がよい場合もあります

産後であっても、強い出血がある、貧血が強い、血圧が不安定、強いめまいやふらつきがある、痛みが強い、発熱がある、気分が悪い、帝王切開後で麻酔の影響が残っている、という場合には、無理に歩くのは危険です。そのような場合は、まずベッド上でできる足の運動や、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫装置、必要に応じて薬による予防などを組み合わせます。血栓のリスクが高い方には、医師の判断でより積極的な予防を行うことがあります。

血栓が疑われる症状を知っておくことも大切です

産後に、片方の足だけが腫れる、ふくらはぎが痛い、足が赤くなる、熱を持つ、左右の足の太さが明らかに違う、という症状がある場合は、深部静脈血栓症の可能性があります。

また、突然の息苦しさ、胸の痛み、動悸、冷や汗、急な呼吸困難、失神しそうな感じがある場合は、肺血栓塞栓症の可能性もあります。これらは命に関わることもあるため、すぐに医療者へ伝える必要があります。

血栓予防のためにできること

産後の血栓予防には、早めに少しずつ動くこと、足首をよく動かすこと、水分を適切にとること、長時間同じ姿勢でいないことが大切です。授乳や育児で座ったままの時間が長くなる場合も、時々足首を動かしたり、可能であれば立ち上がったりするとよいでしょう。

また、帝王切開後、肥満、35歳以上、喫煙、血栓症の既往、長期安静、妊娠高血圧症候群、多胎妊娠、大量出血などがある場合は、血栓症のリスクが高くなることがあります。このような方は、より注意深い観察と予防が必要です。

まとめ

産後の血栓予防には、体を動かすことが大切です。しかし、「無理にでも動く」のではなく、体調を見ながら安全に少しずつ動くことが大切です。動ける方は早めに離床し、まだ歩けない方はベッド上で足首を動かすことから始めましょう。

産後のお母さんの体は、出産という大きな仕事を終えたばかりです。血栓を予防するためにも、安静にしすぎないことは大切ですが、無理をしすぎる必要はありません。医療者と相談しながら、自分の体の状態に合わせて、少しずつ回復していくことが大切です。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。