更年期はいつからいつまで? ― その終わりはあるの?
「私の更年期はいつからいつまで続くのですか?」
「この更年期症状はいつ終わるのですか?」
外来で、更年期の方から、よくいただくご質問です。女性ホルモン補充療法(HRT)を始めて症状が落ち着いてくると、多くの方が「この薬はいつまで続けるの?」と、“次”のことを気にされます。本当にその「いつ」がわかれば安心ですが、閉経の時期と同じように、更年期症状の経過には大きな個人差があります。
閉経と更年期の時期について
最終月経から1年間月経がなければ閉経と診断されます。ただし閉経と診断された後に再び月経が起こることもあり、卵巣機能が一時的に回復する場合もあります。人体はとても複雑で、一律には測れないです。更年期は閉経の前後5年ずつの約10年間を指し、一般的に45歳から55歳頃です。でも、閉経して初めて、更年期がいつから始まったのかを判断することができるのです。また、閉経後5年間が更年期ですが、5年間できっちりと症状が区切れるわけではありません。
更年期症状は人によってまったく違う
更年期症状は、まったく出ない方もいれば、ほてり・発汗・関節痛・気分の落ち込みなどが複合的に強く出る方もいます。典型的な経過があるわけではなく、症状の種類や出方、続く年数も人それぞれです。研究では、多くの方は5年以内に落ち着く傾向がありますが、10年以上続くケースもあります。さらに季節や生活環境によって波のように強弱を繰り返すこともあります。
症状の「典型的な順番」はある?
一般的には「月経不順 → ホットフラッシュ(血管運動神経症状) → 精神症状(不眠やイライラ) → 膣の症状」といった順で症状がみられると考えられます。けれども、実際には、この順番通りに進むことは少なく、同時に起きたり、症状が入れ替わったりすることもあります。
注意してほしい「不正出血」
更年期の時期は「不正出血」も起こりやすくなります。「卵巣機能が少し復活しただけかな」と思いたくなるかもしれませんが、閉経期以降の不正出血は子宮体がんのサインであることもあります。子宮体がんは、子宮頸がん検診では見つかりません。多くの場合、不正出血が発見のきっかけになります。ですので「いつもと違う出血」があれば、必ず婦人科を受診してください。
まとめ
- 更年期が「いつからいつまで」という明確な線引きはできません。
- 一般的には閉経の前後10年間(45〜55歳頃)が更年期とされます。
- 更年期特有の症状は5年以内に落ち着く人が多いですが、10年以上続く人もいます。
- 出方・感じ方は人それぞれで、季節や環境によっても変動します。
- 特に閉経後の不正出血は軽視せず、必ず受診をするようにしましょう。
更年期は「終わりの見えにくいトンネル」に感じるかもしれません。けれど、波を繰り返しながら少しずつ和らぎ、乗り越えていける時期です。焦らず、ご自身のペースで向き合っていただければと思います。
女性ホルモン補充療法を長くつづけられる
女性ホルモン補充療法は、単に更年期の症状を和らげるだけでなく、認知機能を保ったり、骨粗しょう症予防にも有効です。特に治療は何歳までや何年間で終了という決まりはありません。女性ホルモン補充療法を終了するのは死ぬときだ、という意見も海外では言われています。是非、女性ホルモン補充療法やその他の治療を組み合わせて、更年期を乗り越えて、閉経後も元気で若々しく、寝たきりにならず、認知症にならずに死ぬまで自分の脚で歩いて元気に過ごす人生を送りましょう!