高血圧をやさしく整える
生活習慣とにがりのはなし
健診で「血圧が高いですね」と言われると、不安になる方も多いと思います。けれども高血圧は、ただ薬で数字を下げればよい、というものではありません。毎日の睡眠、食事、運動、ストレス、そして家庭での血圧記録が、血管の健康に大きく関わっています。
今回は、ゆいクリニックでお話ししている「高血圧とのやさしい付き合い方」を、生活習慣とマグネシウム、そしてにがりの活用も含めてお伝えします。
※現在お薬を飲まれている方は、自己判断で中止・変更せず、必ず主治医にご相談ください。
高血圧はなぜ体に悪いのでしょうか
血圧が高い状態が続くと、血管の壁に強い圧力がかかり続けます。
血管はその刺激に耐えようとして、少しずつ厚く、固くなっていきます。これが「動脈硬化」です。動脈硬化が進むと、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、心不全、慢性腎臓病など、命に関わる病気のリスクが高くなるとされています。ただし、動脈硬化を進める原因は血圧だけではありません。高血糖、脂質異常、酸化ストレス、睡眠不足、ストレス、喫煙、運動不足など、いくつもの要因が重なって血管は傷んでいきます。だからこそ「血圧の数字だけ」を見るのではなく、生活全体を整えることが大切です。
薬は「土台」、生活習慣は「伸びしろ」
降圧薬は、脳卒中や心血管イベントの予防に役立つ大切なお薬です。一方で、軽症高血圧で心血管リスクが低い方では、薬の効果が必ずしも単純ではないことを示す研究もあります。また、血圧を下げすぎることが、かえって体に負担となる可能性が示された報告もあります。大切なのは、薬を「飲む・飲まない」だけで考えないことです。薬は必要な方にとって大切な土台です。そして、睡眠、食事、運動、節酒、禁煙、家庭血圧の記録は、健康寿命をのばすための大きな伸びしろです。
お薬を飲んでいる方は、自己判断で中止せず、必ず主治医と相談しながら進めましょう。
まず大切にしたい3つのこと
高血圧と向き合うとき、まず大切にしたいことは3つあります。
1つ目は、家庭で血圧を測ること。
朝と夜の2回、安静時に測ってみましょう。診察室での血圧より、家庭での血圧の方が、普段の状態を反映しやすいことがあります。
2つ目は、生活習慣を整えること。
睡眠、食事、運動、ストレスケア。毎日の小さな積み重ねが血圧に影響します。
3つ目は、変化を記録すること。
血圧だけでなく、睡眠時間、食事、体調、ストレスなども一緒に書いておくと、自分の血圧がどんな時に上がりやすいのかが見えてきます。
血圧が上がりやすくなる要因
血圧は毎日同じではありません。いろいろな要因で変動します。
- 睡眠不足
- ストレス
- 暴飲暴食
- 喫煙
- 飲酒量が多い
- 肥満
- 運動不足
- ホルモンバランスの乱れ
- 白衣高血圧
原因がひとつだけということは少なく、複数の要因が重なっていることが多いものです。だからこそ、無理に一気に変えようとせず、できるところから生活全体をやさしく整えていきましょう。
整えたい生活習慣
1. まずは7時間眠る
睡眠不足は自律神経の乱れにつながり、血圧にも影響しやすくなります。寝る時間をなるべく一定にする、寝る前のスマホを控える、お風呂で体を温めるなど、小さな工夫から始めてみましょう。
2. 加工食品の塩を減らす
減塩は大切ですが、「食卓塩を少し減らす」ことだけに意識が向きすぎる必要はありません。特に気をつけたいのは、加工食品に含まれる塩です。お惣菜、インスタント食品、加工肉、レトルト食品、添加物の多い加工品などは、知らないうちに塩分が多くなりがちです。できるだけ自然な食材を選び、だしや香味野菜、天然の塩などで味を整えるとよいでしょう。
3. 野菜・果物・豆をしっかり食べる
野菜、果物、豆類、海藻、イモ類などに含まれるカリウムは、余分な塩分を体の外に出す働きを助けます。毎食に一品、野菜や豆、海藻をプラスすることから始めてみましょう。
※腎臓の病気がある方や、腎臓のお薬を飲んでいる方は、カリウム摂取について主治医にご相談ください。
4. 砂糖だけでなく精製糖質にも注意
甘いお菓子やジュースだけでなく、白米、パン、麺類などの精製された炭水化物も、血糖値を急に上げやすい食品です。血糖値の急上昇は血管に負担をかけ、動脈硬化のリスクとも関係します。白米を玄米や雑穀ごはんにする、菓子パンを控える、甘い飲み物を水やお茶に変えるなど、できるところから見直してみましょう。
5. お酒は休肝日をつくる
毎日お酒を飲む方は、まず週に2日、休肝日をつくることを目標にしてみましょう。
「飲まない日」を先にカレンダーへ書いておくと、習慣にしやすくなります。
6. たばこは卒業を目指す
喫煙は血管に大きな負担をかけ、血圧を上げる要因のひとつです。自力でやめるのが難しい場合は、禁煙外来を利用する方法もあります。
7. 食事のリズムを整える
夜遅い食事は、食べすぎや間食の増加につながりやすくなります。夕食は、できれば就寝3時間前までを目安にしてみましょう。
8. 軽めの運動を週150分
有酸素運動は、週150分以上が目安とされています。1日20〜30分ほどのウォーキングでも十分です。ヨガや軽い体操など、気持ちよく続けられる運動を選びましょう。
いきなり激しい運動をすると、かえって血圧が上がることもあります。無理のない範囲で続けることが大切です。
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血圧と生活を一緒に記録しましょう
血圧は、朝は起床後トイレを済ませたあと、夜は寝る前に、どちらも安静時に測るのがおすすめです。血圧計は、できれば上腕式を使いましょう。記録するときは、血圧の数字だけでなく、生活の様子も一緒に書くと意味が出てきます。
- 朝の血圧
- 夜の血圧
- 睡眠時間
- 体調
- 食事メモ
- 運動したか
- ストレスが強かったか
完璧に書こうとしなくて大丈夫です。「昨日は寝不足だったから高めだったかも」「外食が続くと上がりやすいかも」など、自分の傾向が見えてくることが大切です。
動脈硬化を防ぐために抗酸化を意識する
動脈硬化には、酸化ストレス、つまり「体のサビ」が関わるとされています。血管を守るためには、血圧だけでなく、体をサビさせにくい生活を意識することも大切です。
肉・加工肉を減らす
加工肉や赤身肉は、活性酸素や炎症との関連が指摘されています。完全に肉をやめる必要はありませんが、頻度を減らす、加工肉を控える、魚や豆類などの植物性たんぱく質を増やすだけでも、体への負担を減らすことにつながります。
トランス脂肪酸を避ける
トランス脂肪酸は、悪玉のLDLコレステロールを上げ、善玉のHDLコレステロールを下げるとされています。動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを上げる可能性があるため、できるだけ避けたい脂です。マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、これらを使ったパンや洋菓子、揚げ物、カップラーメンなどには注意しましょう。
購入時には、原材料表示の「マーガリン」「ショートニング」「加工油脂」を確認してみてください。
色とりどりの食材を選ぶ
緑黄色野菜、ベリー類、大豆製品、お茶、オリーブ油などには、ポリフェノールなどの抗酸化成分が含まれています。お皿の色が増えると、自然と栄養バランスも整いやすくなります。
マグネシウムが体にうれしい理由
現代の食生活では、加工食品が多くなり、マグネシウムが不足しやすいとされています。
マグネシウムは、体の中で幅広く働く大切なミネラルです。
- 食べたものをエネルギーに変える
- 神経や筋肉の働きを助ける
- こむら返りとの関係がある
- ストレスや気分の安定に関わる
- 血糖値の維持に関わる
- 心臓や血管の働きを助ける
納豆、海藻、青魚、ナッツ、大豆製品、緑の野菜などを意識して取り入れてみましょう。
にがりという選択肢
にがりは、海水から塩を取り出したあとに残る、ミネラルを含む液体です。
特にマグネシウムを多く含むものがあり、みそ汁や炊飯に少量加えることで、無理なくマグネシウム補給に役立てることができます。
ただし、たくさん摂ればよいというものではありません。
過剰摂取、腎機能、服薬との相互作用には注意が必要です。心配な方は、主治医や薬剤師にご相談ください。
今日から始められるチェックリスト
全部を一度にやろうとしなくて大丈夫です。まずはひとつだけ選んでみましょう。
生活
- 朝と夜、家庭で血圧を測る
- 夜は7時間眠る
- 週に2日、休肝日をつくる
- 20分のウォーキングを習慣にする
- 血圧・食事・気分をメモする
食事
- 加工食品やインスタント食品を減らす
- 毎食に野菜・果物・豆をプラスする
- 白米を玄米や雑穀に置き換える
- 甘い飲料や菓子パンを減らす
- 納豆・海藻・青魚・ナッツを意識する
- 肉や加工肉を減らす
- マーガリンや加工油脂を避ける
- 禁煙する、受動喫煙も避ける
マグネシウム補給
- 緑の野菜、海藻、大豆、青魚を意識する
- みそ汁や炊飯ににがりを少量加える
- 足りないと感じたらサプリも選択肢にする
- 製品表示の摂取量を必ず守る
おわりに
高血圧は、薬で数字を下げるだけのものではなく、生活全体の調子を映す鏡のようなものです。家庭で血圧を測ってみる。夕食の時間を少し早くしてみる。白米を雑穀ごはんにしてみる。20分だけ歩いてみる。そんな小さな一歩が、5年後、10年後の血管を守ることにつながります。ゆいクリニックでは、お薬と生活、その両方から、皆さまの健康を支えていきます。
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参考文献・参考サイト
- 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン JSH 2025
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「活性酸素と酸化ストレス」
- Sheppard JP et al. JAMA Internal Medicine. 2018;178(12):1626-1634.
- Cochrane Review:軽症高血圧に対する薬物治療
- JACC Study
- WHO/IARC 2015 加工肉・赤肉の発がん性評価
- WHO「Replace Trans Fat」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「マグネシウム」
【ご注意】
本コラムは一般的な健康情報の紹介を目的としたものであり、個別の診断や治療の判断を行うものではありません。お薬を服用中の方は、自己判断で中止・変更せず、必ず主治医にご相談ください。


