閉経後女性の生物学的年齢:ホルモン補充療法歴があると若くなる?
Hormone Therapy and Biological Aging in Postmenopausal Women:Liu Y, et al. JAMA Netw Open. 2024; 7: e2430839.
英国バイオバンクに登録された閉経後女性11万7763人(平均年齢60.2歳)を対象に、ホルモン補充療法(HT)、暦年齢と生物学的年齢の差異、および社会経済的地位との関連を人口ベース後ろ向きコホート研究で検討。9種類のバイオマーカーを用いて算定した表現形質上の年齢(phenotypic age)を使用して、生物学的年齢と暦年齢との差異を評価した。その結果、表現形質上の平均年齢は52.1歳で、40.3%にホルモン補充療法(HT)の使用経験があった。HT使用なしに比べ、使用歴ありは生物学的年齢との差異の小ささに関連していた(β-0.17、95%CI -0.23--0.10)。HTと差異の小ささとの関連は、社会経済的地位が低い女性でより顕著で、特に教育で有意な交互作用が認められた(高学歴女性β-0.08、95%CI -0.17-0.01、その他β-0.23、95%CI -0.32--0.14、交互作用のP=0.02)。
大規模に閉経後女性での生物学的年齢とホルモン補充療法の関連を調べられた。
その結果、女性ホルモン補充療法をおこなっている方が、暦年齢よりも生物学的年齢がより若いという結果が得られた。
加齢指標
加齢指標とは、加齢に伴う身体や機能の変化を測定し、老化の進行度合いを評価するために用いられる指標のことです。具体的には、栄養状態、体力、認知機能、社会参加など、多角的な側面から評価されます。この研究では、生物学的年齢の指標として「フェノタイプ年齢」(phenotypic age)を使用し、加齢速度の評価を新たな視点で行っています。これは、実際の年齢(暦年齢)と生物学的年齢の指標であるフェノタイプ年齢との間の差をさしています。フェノタイプ年齢は、身体の生理的状態や健康状態を基に、加齢の進行度を推定する数値であり、加齢差がプラスだと「生物学的に暦年齢より老化が進んでいる」、マイナスだと「生物学的に暦年齢より若い」ことを示す。フェノタイプ年齢は、様々な病気や死亡リスクを反映することから、加齢速度を評価するのに有用だとされており、他の加齢指標(例:テロメア長)よりも個体差を捉える能力が高いことが示されています。
加齢指標としてあげられるもの
- 栄養状態:BMI、コレステロール値、アルブミン値、血中ヘモグロビン値、HbA1c値、クレアチニン、体組成測定、
- 体力:握力、歩行速度、開眼片足立ちなど.
- 認知機能:認知機能検査、抗うつ度など.
- 社会参加:生活機能、外出頻度など
見た目の若々しさも加齢指標
見た目の若々しさは数値で評価するのは難しいですが、以下も加齢指標として考えて良いです。
- 白髪の増加、脱毛
- シワ、たるみ、シミの発生
- 歩幅の減少、姿勢の変化
- 身長の低下、体重の減少
今回の研究での測定指標
この研究では、フェノタイプ年齢を推定するために9つのバイオマーカー(白血球数、血中アルブミン、血糖値、血液中リンパ球比率など)を用いている。これらの血液データと死亡リスクの関連性を解析し、得られたモデルを用いて、暦年齢を考慮しつつ「予測される死亡リスク」からフェノタイプ年齢を算出している